電子部品分野の上場企業50社の決算は、2022年3月期の連結業績予想を発表している48社中、32社が通期の当期利益を上方修正した。上期は自動車メーカーの調達方針の変化などで実需以上の出荷が続いた結果、コロナ禍で経済活動が停滞した前年から大きく改善。上期として過去最高を更新した企業も目立つ。ただ、足元では半導体不足などで需要の一服感も強まっている。部材不足と挽回生産の間で激しく揺れる需要環境に適応しつつ、中長期の戦略を描けるかが各社の成長を左右しそうだ。

半導体不足、行方見極めにくく

21年4―9月期は自動車の減産影響などを乗り越え、50社中47社の当期利益が前年同期比で増益となった。半導体不足やサプライチェーン(供給網)寸断の影響を懸念した顧客が部品在庫を積み増した結果、実需以上の出荷を続けられたことが大きい。

ただ、足元ではその積み上げに一服感が出てきている。セットメーカーの間で在庫の過剰感が強まっているためだ。影響はすでに電子部品メーカーにも波及。村田製作所は7―9月の積層セラミックコンデンサー(MLCC)をはじめとするコンデンサーのBBレシオ(3カ月平均の受注額を販売額で割った値)が約0・9と、5四半期ぶりに活況の目安とされる1を下回った。村田恒夫会長は「中華圏のスマートフォンメーカーの在庫調整が長引いている」とその要因を分析する。

一方、第5世代通信(5G)関連など、一部部品の需要は依然として旺盛だ。例えば規則正しい振動を生みだすことで、電子機器を正常に動かす水晶振動子。京セラの谷本秀夫社長は11月の決算会見で「シェアの高い小型の水晶振動子を、新世代の携帯電話のほとんどで使ってもらっている」と強調。スマホ全体が落ち込む中でも、5G対応タイプの生産台数は期初想定を維持している。

イビデンが手がけるICチップとプリント配線板をつなぐ半導体パッケージも、データセンター(DC)向けサーバー市場を中心に活況だ。同社幹部は「高速通信の普及でDCサーバー向けの半導体がさらに伸びる」とし、半導体パッケージの需要も好調が継続するとみる。

とはいえ、電子部品全体では「需要の拡大局面が後半に入ってきたのは明らか。今後、受注はいったんピークアウトし、反動減が起きる可能性が高い」(業界関係者)。電子部品メーカーの間でも慎重な見方が広がっており、3割近い企業が22年3月期通期見通しを据え置いたのもこのためとみられる。

イビデンが手がけるICチップとプリント配線板をつなぐ半導体パッケージも、データセンター向けサーバー市場を中心に活況だ(新棟完成イメージ)

問題は反動減の規模だが、関係者の間でも見解が分かれる。自動車やスマホなど最終製品の生産動向を左右する半導体不足の行方が見極めにくいためだ。上期以上に不足感が強まった結果、「景気回復の恩恵を十分取り込めない最終製品が出てくる恐れがある」(同)。反動減長期化のシナリオだ。

新産業「メタバース」押し上げ

一方、足元では「ピークアウト懸念が挽回生産への期待に変わりつつあるようにも見える」(大和証券の佐渡拓実チーフアナリスト)との声も出始めている。根拠の一つが電子部品の主要顧客である自動車メーカーの生産計画だ。

トヨタ自動車とホンダは12月、国内全工場(ホンダは4輪車工場)のラインを通常稼働に戻す見通し。トヨタは月間100万台規模の高水準には届かないものの、12月としては過去最高水準の生産を計画する。さらに「22年度上期には挽回生産の動きが自動車以外の分野にも広がり、電子部品需要が再び強まるシナリオも想定しておく必要が出てきている」(業界関係者)。

5G関連需要の活況や客先の挽回生産は想定内の動きだが、大和証券の佐渡氏は別の要素に着目する。「今年見られたサプライチェーンの目詰まりは、一過性ではなく構造的な要因もあるはず。そうした構造要因を変えるための設備投資が今後は出てくる」と佐渡氏は指摘。最終製品の生産能力向上と設備の自動化の双方で、電子部品需要の増加が見込める。

新産業への期待も高まる。メタバース(実社会に近い経済活動を行えるインターネット上の仮想空間)の開発に大手テック企業が相次ぎ参加するなど、新たな動きが加速。佐渡氏は「メタバースの普及にはより多くのDCが必要」と見ており、中長期の電子部品需要の押し上げ要因になり得る。

コロナ禍の収束に未だ不透明感が漂う中、どちらのシナリオでも電子部品需要を一言で語ることは難しくなっている。成長が見込める需要分野や製品に投資の軸足を移すなど、柔軟な対応がこれまで以上に求められそうだ。