ダイハツ工業・仲保俊弘氏が語る

小型スポーツ多目的車(SUV)「ロッキー HEV」は、商用車を除きダイハツ工業にとって実質的に初めてのハイブリッド車(HV)。エンジンで発電しモーターのみで走行する。ダイハツ車らしく日常の運転で便利と感じられる良品を廉価でお届けすることを念頭に置いた。

消費税抜きで業界初となる200万円を切るSUVのHVを作ろうと発破をかけてきた。コストと性能のバランスを考えながら、達成できた(X HEVグレードで消費税抜きの価格は192万3636円)。エンジンではライバル車とのスペック競争を避け、電池も容量を最小化した。それでも街中を低燃費でしっかり走れるようにした。

当社が得意とする軽自動車ではデザインを中心に考えるモノづくりが多く、エンジンや走行モーターなどをコンピューターで統合制御する技術はなかった。このためトヨタ自動車に延べ50人の技術者を2―3年出向させ、HVを学んだ。各部門からエース級の技術者も投入した。時には役員が加わり、大きな会議体で技術を「見える化」しながら進めた。

試作しても実際に走行してみないと分からないので、走行テストも前例のない規模になった。自家用車の白ナンバーを試作車12台で取得し、ダイハツ本社がある大阪から北海道標津町までや、各地を1年近く実走した。このテストで新たに700件もの気付きを得て、技術の改良や確定の判断に生かした。

HVを販売できるところまで来て、技術のレベルも大きく進歩した。コストを考えて悩み議論しながら「この技術は必要、ここは省ける」と判定した。

ハンドルを切る時の手応えやエンジンをかける時の自然感など大きなクルマにある「感性」や「質感」の課題にも、これから踏み込まないといけないと感じた。

社会はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向かうので、市場の大きな小型車からHVを始めた。軽の電動化は技術も低価格化も壁が高いが、経験を生かしてできるだけ早く開発したい。

【記者の目/トヨタから学び、独自車開発】

ダイハツは電動車で出遅れていたが、トヨタから全面的な支援を得て、独自のHV開発にこぎ着けた。これまでなかった走行データと、モーターを含む駆動による制御の経験や知見を獲得した。日本市場固有の軽の電動化はまだ方向を見通せないが、ダイハツとしての答えを出す時期が近づいている。(大阪・田井茂)

ロッキー(Premium G HEVグレード)
全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm
車両重量=1070kg
乗車定員=5人
エンジン=水冷直列3気筒12バルブDOHC横置
総排気量=1196cc
最高出力=60kw(82馬力)
変速機=なし
WLTCモード燃費=1L当たり28・0km
価格=234万7000円(消費税込み)