地球上空では数多くの人工衛星が周回しており、データ通信や地球観測、測位などに活用されている。特に地球上の変化を定期的に捉える地球観測分野は、干ばつなどの環境変化や災害の監視に使われている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱電機は地球観測衛星「だいち」3、4号機を開発中で、より詳細な地球上の観測データの獲得と利用分野の拡大を目指している。(飯田真美子)

2006―11年に運用のだいち初号機には光学センサーとレーダーセンサー(SAR)を搭載しており、11年3月の東日本大震災発生時の緊急観測や全球規模の地図作成などに使われた。14年から運用中の2号機はレーダーセンサーのみを搭載。昼夜・天候の影響を受けずに地球上を観測できる特性を生かし、雲に覆われやすい熱帯地域の監視などに活用している。

初号機の後継機となる3号機はJAXAでは約10年ぶりの光学衛星で、次期大型基幹ロケット「H3」初号機に搭載して21年度内に打ち上げる予定。3号機に搭載する光学センサーの観測幅は約70キロメートルと広く、初号機の3倍となる分解能を持ち、従来より鮮明な地球上の観測データを得られる。また観測波長帯が4種類から6種類に増え、海や湖などの水深や植物の枯れ具合が宇宙からでも分かるようになる。

観測モードは定点観測以外に、災害時には被災地を発災後24時間以内に撮影するモードがある。一度に広域を観測したり、衛星の角度を変えて沿岸域など対象の地形に応じた観測もできるという。JAXAの山川宏理事長は、「災害時の観測データの有効活用には発災前のデータとの比較が重要。平時から繰り返し観測してデータを蓄積する取り組みが必要」と強調する。

だいち3号に搭載する光学センサーの真空試験(JAXA提供)

一方、2号機の後継機である4号機はレーダー衛星であり、観測幅は従来の4倍となる200キロメートルを観測できる。4号機には観測データを高速で電波からデジタル処理し、複数同時に電波を受信できる「デジタルビームフォーミング技術」を導入するため、観測幅や広域観測などが拡大する見通しだ。

また船舶自動識別装置(AIS)とレーダーセンサーで共同観測し、AISで認識できない漁船などの位置や分布の把握を可能にする。現在は製作・試験フェーズに入っており、アンテナの熱真空試験などを進めている。開発完了の審査終了後に打ち上げの準備をはじめ、22年度にも運用を始める。4号機の開発に関わるJAXAの鈴木新一プロジェクトマネージャは「だいち2号機の技術を発展させ、安心・安全を守ることに貢献したい」と意気込む。

人工衛星での地球観測は多くの分野から注目されている。小型衛星による観測網「小型衛星コンステレーション」での観測も進む中で、いかに固有の技術で需要を増やすかがカギになる。3、4号機から得られる観測データのユーザーを確保し、今後の後継機に結びつく技術開発が必要となる。