「早生樹」投資会社と造林/「起業」研究室挙げて戦略

東京農工大学がイノベーション創出に向けて、執行部トップダウンの産学連携を進めている。成長の早い樹木による森林造成法では投資会社と組み、新たな森林管理、バイオマスエネルギー、有用成分活用の3テーマでビジネス化を狙う。組織的に農・工融合を仕組むほか、研究室単位の事業化支援も4案件で動かしている。中小規模大学の社会実装と外部資金獲得の手法として注目されそうだ。(編集委員・山本佳世子)

東京農工大学がジャパンインベストメントアドバイザーと始めた早生樹の共同研究は、戦後に造林された杉やヒノキの伐採後の再生に焦点を当てる。早生樹造林は温暖な西日本が中心だったが、同大の栃木県佐野市の演習林を使い、東日本での新モデル構築に取り組む。

有用成分を抽出できる早生樹を選び出し、木質バイオマスの安定供給や、二酸化炭素吸収とのバランスをみた脱炭素化など、組み合わせているのがポイントだ。多様な研究者の参加が必要になるため、学長・理事、部局長らが前面に立つ全学プロジェクトとした。

また工学部はTRAIL(東京都中央区)と今夏に提携し、同社が研究の初期段階からのビジネス構想を支援する。技術供与、複数企業との共同研究、実証試験、資金調達、ベンチャー起業など案件に合わせて設計する。

起業支援の対象は一般に発明者個人だが、ここでは学生を含む研究室挙げての戦略を立てる。千葉一裕学長が近年、確立してきた博士学生らを新事業の担い手とするイノベーション教育も組み込みやすい。千葉学長は「本学は他が目を付けていない“尖端的”な領域を開拓し、論文業績やランキングに偏らない別の世界をリードする」という姿勢を強調している。

大規模大学では産学トップによる包括提携後、学内の専門担当者が個別テーマをボトムアップで設定するのが一般的だ。中小規模大学ではネットワークを持つトップが強く関与しつつ、外部機関の支援も活用して効果を引き出すことが期待されそうだ。