電気自動車(EV)への異業種参入が本格化してきた。ソニーグループは今春にEVの新会社を設立し、台湾の鴻海精密工業はEVの試作車を開発。米アップルは2025年にもEVを発売すると報じられた。EVはガソリン車と比べ部品点数が少ないという構造上の特徴が参入障壁を下げる。また自動運転といったソフトウエアとの親和性もIT企業などを引きつける。(西沢亮)

「ソニーはモビリティを再定義する『クリエイティブエンタテインメントカンパニー』になれる」。ソニーの吉田憲一郎社長は米国での展示会で4日(現地時間)、EVの市場投入を本格的に検討していく考えを明らかにした。

同社は20年にEVの試作車を完成。自社の車載用センサーを搭載する一方、音響システムや第5世代通信(5G)への接続機能などセンサー以外の技術も盛り込んだ。運転支援技術の進展で移動時間の過ごし方が変わる中、エンターテインメントを含めた事業領域の拡大を見据える。

鴻海は20年にEV開発用のソフトウエア・ハードウエアプラットフォーム(車台)を発表し、21年には台湾自動車大手・裕隆グループなどとEVの試作車を披露。米新興EVメーカーのフィスカーや国営タイ石油会社(PTT)とEV製造に関して提携合意を結ぶなど事業化に向けた動きを着々と進める。

21年1月にEV参入に向け複数の自動車メーカーとの交渉が明らかになったアップル。現地メディアは、完全自動運転に対応できるEVを早ければ25年にも発売すると報じた。

アップルや鴻海の試みは、スマートフォンで取り入れた設計と生産の水平分業モデルを車産業にもたらす可能性が高い。中国では百度(バイドゥ)、滴滴出行(ディディ)などが現地自動車大手との提携やEVの共同開発に乗り出している。

既存の自動車メーカーも21年にEV戦略を相次ぎ発表。トヨタ自動車は30年のEV販売目標を350万台に引き上げたほか、日産自動車は30年度までにEVの新型車15車種を投入する方針を示した。また独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)といった欧米メーカーも電池を含めた投資計画を明らかにし、アクセルを踏み込んだ。

脱炭素に向け電動車需要が高まる中、産業構造の変化と共に異業種を含めた多様なEVの投入が見込まれ、自動車の形が大きく変わることになりそうだ。