三菱電機は2022年6月めどに生産を終了する熊本県の液晶モジュール工場をパワー半導体などの製造に転用する。主要国の脱炭素シフトを受けて自動車の電動化や白物家電のインバーター化が進展し、省エネルギーデバイスの需要も急拡大している。既存設備を有効活用して短期間での生産能力増強を図り、大規模投資を続けるライバルの欧米勢に対抗する。

三菱電機は子会社のメルコ・ディスプレイ・テクノロジー(MDTI、熊本県菊池市)で車載・産業用の中小型薄膜トランジスタ(TFT)液晶モジュールを製造してきた。ただ、中国メーカーなどの台頭で価格競争が激化した結果、20年に液晶事業からの撤退を決断した。

MDTIはクリーンルームや用役設備を有しており、今後の重点成長事業であるパワー半導体などの生産に活用する方針だ。人員は約430人(20年3月末時点)。三菱電機はすでに熊本県合志市に主力のパワー半導体工場を持ち、事業上の連携がとりやすい環境にある。

現在、MDTIの新たな役割について半導体製造の前工程、後工程などの詳細を検討中。組み立て担当の後工程の方が早期転用が可能であり、福岡県と兵庫県、島根県に工場を構える国内の後工程体制の見直しが中長期的に必要になりそう。

同業の富士電機もマレーシアのハードディスク駆動装置(HDD)用記録媒体工場をパワー半導体向けに転用する。既設のクリーンルームを使って、23年度に8インチウエハー対応の生産ラインを立ち上げる計画。

近年の半導体市場の活況の陰で製造装置や工場設備部材価格の高騰、納期遅延が深刻な問題となっている。新工場建設より既存工場を有効活用する方が得策と判断するケースが今後も増えそうだ。世界で最も数の多い国内半導体工場の争奪戦に発展する可能性がある。


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