この冬も強い寒気が幾度も流れ込み、雪国の日本海側を中心に大雪に見舞われている日本。防災科学技術研究所雪氷防災研究センターでは降積雪の基本的性質や計測に関する研究に加え、人々の行動変容を促すことで雪氷災害による犠牲者や家屋の倒壊などを減らせるようにさまざまな研究開発を進めている。(山谷逸平)

【積雪重量分布を地図化】雪下ろし判断材料に

国土の約半分が豪雪地帯の日本。消防庁の統計によれば、平均で毎年100人程度が雪氷災害の犠牲になっている。特に屋根からの転落事故が多い。また、高齢化に伴い中山間地域では人手不足で雪下ろしが困難となった結果、雪の重みによる空き家の倒壊も頻発している。

そこで、防災科研の雪氷防災研では屋根の雪処理中の事故を軽減するため、屋根に積もった雪下ろしの判断材料となる積雪重量分布情報を地図化した「雪おろシグナル」を開発した。開発に当たっては新潟大学と連携し、防災科研の積雪変質モデルを使って積雪重量分布情報を作成。家屋破損リスクを7段階に色分けし、国土地理院の地図に重ねてウェブ上で見られるようにした。

2018年1月に新潟県を対象に公開して以降、山形、富山、秋田、福井、長野県に拡張。現在6県と連携しながら運用中だ。県ホームページからのリンクなどで見られる。連携を拡張中で21―22年冬期中にも北海道と青森県で運用を始める計画だ。

アクセスが一番多いのは地元各県からだが、東京からのアクセスも2割弱あるという。研究開発を進める平島寛行主任研究員は「開発当初は想定していなかったが、遠隔地から実家の屋根雪の状況を気にしてアクセスしているのではないか」と話す。

今後は改良を段階的に進めていく。1月中に秋田大学が開発したモデルと融合して、積雪深の観測点から離れた場所の精度を上げるほか、7段階に色分けしたリスク情報をより分かりやすくする。また、現状では平地の積雪重量から屋根雪荷重を推定しているが、将来的に屋根雪荷重を計測できる手法を開発し、精度をさらに高めて発信する予定だ。

【表層雪崩の危険度予測】39時間先まで色分け

雪氷防災研では、低気圧による降雪が積もることによって生じる表層雪崩の危険度予測情報の提供に向けた試験運用も進めている。17年までに原型を作り、17―18年冬期から雪崩発生の危険度を5段階に色分けして5キロメートル四方の範囲の平均的な状態を地図上で表示するシステムの試行を始めた。予測は39時間先まで可能にした。

日本の太平洋沿岸を通る南岸低気圧をはじめとする低気圧の進行方向前面の層状雲からは、雲粒があまり付いていない大きめの板状結晶や崩れやすい形状の角柱状結晶などが降りやすい。こうした結晶はサラサラしていて、弱層と呼ばれる雪の結合が弱い層を形成し、表層雪崩を引き起こす原因となっている。

14年2月に発生した関東・甲信地方への記録的大雪はこの低気圧性降雪による表層雪崩が原因となった。14年の発生以前からこうした研究を進めてきた中村一樹主任研究員は「太平洋側で発生する表層雪崩はメカニズムが雪国の日本海側で多く発生するものと全く違う」と指摘する。

18年以降にシステムの機能を向上し、低気圧性降雪だけでなく、その後に積もる冬型の気圧配置による降雪も加味して算定できるようにした。近い将来、地吹雪の吹きだまりを考慮したモデルづくりも計画している。中村主任研究員は「まずは今の状態の推定値を正確に出せるよう検証を続けたい。これから先の『予測』の正確性の向上はその次の段階で数年先を目指したい」としている。

雪氷防災研究センターの上石勲センター長は「近年、日本は暖冬少雪の傾向があると言われているが、暖冬でも短時間に集中的に降る雪の頻度は思いのほか減っていない」とする。人々の行動変容を促し、雪氷災害リスクを減らす。雪氷防災研は今後も社会的需要に応じた雪氷災害対策のための研究開発を続けていく。