電気自動車(EV)のモーター磁石などに使う希土類(レアアース)の国際相場が約9年ぶりの高値圏まで上昇している。精製品シェアで約9割を占める中国において、新型コロナウイルス感染対策の影響で隣国ミャンマーからの原料輸送の停滞が長引き、需給が引き締まっている。脱炭素化を背景に風力発電機にも使うモーター磁石の需要が旺盛なことも、相場の押し上げに寄与している。

レアアースの一種でモーター磁石の添加剤に使う酸化テルビウムの中国輸出価格は、足元でキログラム当たり1900ドル近辺と1年前比で2倍近く高く、3カ月前比でも約5割高い。中国のレアアース原料輸入先の約8割を占めるミャンマーで2021年夏に新型コロナ感染者が急増し、中国が人の移動や物流を制限したことで「どの品種が届くのかも分からない状況」(日本の商社)となり、需給がタイト化した。

中国税関総署によれば、21年5月に約5200トンだったミャンマーからのレアアース輸入量(中間原料含む)は同年10月に約40トンまで減少し、全体輸入量も約9割減った。同年11月には物流制限の緩和で輸入が持ち直す動きもあったが、直近では新型コロナ変異株の感染対策で制限が再強化され、相場上昇に拍車がかかった。

一方、用途のモーター磁石は、EVや産業用ロボットのほか発電効率を高めるために風力発電機に使われ、「脱炭素に伴う需要増大も需給を引き締めている」(同)。中国汽車工業協会によれば21年の中国のEV生産台数は前年比約2・7倍の約294万台、中国国家エネルギー局によれば21年11月時点の風力発電の設備容量は直近約2年で約45%増の約3億キロワットと、いずれも世界最大で推移している。

国際エネルギー機関(IEA)の21年発行のリポートによれば、各国の脱炭素政策をベースにしたシナリオでは40年のレアアース需要が20年比で3・4倍となる見通し。主要国ではレアアースの争奪戦が激化しており、21年には米政府が豪レアアース大手の工場誘致で資金拠出を表明したほか、中国政府はレアアース専業の国有会社の設立を発表した。

日本政府もレアアース確保に動いている。経済産業省は21年12月の総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)鉱業小委員会で、レアアース採掘が「許可なく行われるリスクが存在する」として、国内採掘を許可制とする鉱業法改正やリスクマネーの供給強化の了承を得た。当面は公的な支援も支えとなって、レアアースは高値を維持しやすい環境が続きそうだ。