日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合(アライアンス)は27日、今後5年間で電気自動車(EV)の開発などに230億ユーロ(約3兆円)を投じると発表した。2030年までに35車種のEVの新型車を投入し、車載電池の生産能力を220ギガワット時に引き上げる。世界的な脱炭素の流れでEV需要が拡大する一方、新規参入などで競争は激化する。EV市場の覇権奪回に向け、20年を超えるアライアンスの真価が問われる。(西沢亮、江上佑美子、日下宗大)

「アライアンス改善」強調

ルノーのジャンドミニク・スナール会長は同日のオンライン会見で「3年前、アライアンスは史上最悪の危機にあったが、今は3社が相互信頼で結束している」と強調した。日産の内田誠社長は「3社の協業はモビリティーの変革期の中で競争優位性を提供してくれている」と指摘。三菱自の加藤隆雄社長は「今日示した戦略を今後、具体的な形で実施できるかだ」と応じ、アライアンスを基盤に電動車戦略を加速していく意思を示した。

アライアンスでは五つのEV専用車台(プラットフォーム)をそろえる。日産は中型車向け車台「CMF―EV」の開発を主導。30年までに3社で同車台を15車種以上のEVに採用し、年150万台生産する。小型車向け車台「CMF―BEV」の開発はルノーがかじ取りする。既存のエンジン車を含めて部品の共通化を進めコストを大幅に削減する。日産は小型車「マイクラ(日本名マーチ)」の新型車で同車台を採用したEVの開発も決めた。ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は「同車台の採用で世界最高の小型EVになる」と自信を示す。

次世代電池の一つ「全固体電池」では、日産が28年度に同電池を搭載したEVの投入に向け開発を主導。同電池の採用によりガソリン車並の車両コストへの引き下げを見込む。野村証券の桾本将隆アナリストは「商品差別化が難しいEVで技術優位を確立できる可能性」があると指摘。日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は全固体電池を実用化できれば「アライアンスパートナーにも段階的に広めていく」とし、3社の競争力底上げが期待される。

日産は電動化戦略のもう一つの柱にハイブリッド車(HV)を据える。エンジンを発電のみに使いモーターで駆動する独自技術「eパワー」を搭載したHVで、30年度までに8車種の新型車の投入を予定。eパワー向けエンジンとして熱効率50%の技術を開発し、投資も積極化する。

一方、ルノーは自動車レース「F1」で培った技術を生かした独自のHVを展開。今春以降、日産と三菱自のホームグラウンドである日本でHVを順次投入する。三菱自も強みのプラグインハイブリッド車(PHV)の技術を生かしたHVの開発を進める。

戦略遂行、課題多く…

アライアンスではこれまでもHVで連携を強化する動きが見られず、規模のメリットを生かせていない。開発資源も分散し、HVでは隙間風が吹く。

経営再建中の3社だが業績は上向きつつある。日産と三菱自は22年3月期の当期損益で3期ぶりの黒字転換を見込み、ルノーも21年12月期で当期損益の黒字化を視野に入れる。半導体など部品不足の影響で車の減産を強いられるが、奨励金の抑制など販売面の収益性改善が寄与する。

一方、部品サプライヤーからは悲鳴が上がる。コロナ禍の影響で実際の車の生産量は当初の生産計画を大幅に下回る状況が1年以上も続いているという。特に挽回生産を織り込んだ計画に合わせ、原材料を確保し、人員を含めた体制を維持するのは難しく、ある部品メーカー幹部は「増産要請に応えられないケースも認めてほしい」と訴える。

販売面の改善効果が見込めない部品各社にとって、生産減少や資材高騰は直に響く。日産との取引が多い別の部品メーカー幹部は「5、10年後のEV戦略が示されても何も響かない」と吐露する。アライアンスの戦略実現には、サプライチェーン(供給網)の活力を取り込むきめ細かな対応が求められる。