持続可能な経営と社会貢献を両立する「ゼブラ企業」。既存のスタートアップとは異なる価値を提唱する存在として注目を集めている。この概念を広げるために立ち上げたゼブラアンドカンパニー(東京都港区)の共同創業者、田淵良敬氏に狙いや展望を聞いた。

−ゼブラ企業とはどういったものでしょうか

利益の追求だけでなく、事業の成長を通じてよりよい社会を作ることを目指す企業と定義している。短期的に株主価値を最大化することが最大の目的なのではなく、従業員や地域などステークホルダーを巻き込んだ包括的な経営を指している。また、さまざまなコミュニティーと協力して事業を進める姿勢も重要だ。

−ゼブラ企業に注目した経緯は

商社を退職後、国内外でインパクト投資に取り組んできた。ベンチャーキャピタル(VC)投資のやり方を社会起業家に適応すれば、成長を加速させ成果を見える化できると考えていた。

ただ、起業家と話すなかでそういった考えに問題点があることに気がついた。

VC投資の多くは、イグジット(投資の出口戦略)が決まっている。こういった資金の多くは企業価値が10億ドルを超える「ユニコーン企業」を対象に流入している。「早く大きく」することが既存金融の特徴だ。そのため長い時間をかけて成長するゼブラ企業に合った資金が少なかった。また、起業家全員がユニコーン企業を育てるために、経営をしているわけではない。

ジェンダーバイアスや人の意識などを変えるには時間がかかる。年に一回しか収穫できない農業もそういった側面が当てはまる。こういった分野で短期的な成長を求めるのは無理がある。だが、時間がかかることが「事業成長のポテンシャルがない」という訳ではない。既存の金融では環境への影響などは無視されている。そこをきちんと評価していく仕組みが必要だ。我々はそういった領域に資金を供給していきたい。また、資金調達前の事業戦略や計画を一緒に作っていく取り組みも始めた。

共同創業者の阿座上陽平氏(中央)と陶山祐司氏(右)(同社提供)

−ゼブラ企業の成長性やリターンを図る指標の設定や資金の出し先をどのように集めますか

すでにESG投資やインパクト投資の指標がある。それをベースにゼブラ企業に合った指標を体系化していく。重要なのは二つだと考えている。一つが一件の投資だけで成功の判断をしないことだ。投資先企業の周辺で起こる社会へのインパクトこそ重要だ。それは事業を行う地域や従業員など包括的なものになる。もう一つが会社の目指す方向に合わせてイグジットを決めること。期間を長くするだけで、通常のイグジットを狙える場合もあれば、長期保有することで継続的な利益をもたらすことも考えられる。投資先である陽と人(福島県伊達郡)は福島県の柿を使った女性のデリケートブランドを手がけている。福島県の農家や従業員の所得向上など包括的な影響を視野に入れている。他社の参考になるのではないか。同社とは将来の成長段階に合わせて、イグジットの方向性を決めるという話し合いをしている。

現在は一般財団法人の社会変革推進財団(東京都港区)などから期限の縛りがない資金を供給してもらっている。将来は地域経済を下支えする意味も込めて、地域の金融機関も資金の出し先になってもらいたい。

また足下で問い合わせが多いのは、地方企業からの相談だ。事例としては21年にアパレル製造などを行う石見銀山群言堂グループ(島根県大田市)と町作り事業に取り組んだ。同社が活動する大森町は人口400人ほどの小さな町だ。そのため町の多くの住人は同社で働いている。同社の企業活動が町を支えているといっても過言ではない。そういった背景から、地域と共に持続的に発展するビジネスを作るべく取り組んだ。日本の特徴として地域へのインパクトを重視する傾向があると感じる。

−今後活動を広げていくための展望は

まだゼブラ企業の数は少ない。イベントなどで事例を共有していく必要がある。そういった取り組みを通じて、潜在的にゼブラ企業を志す起業家に訴求していく。また、ゼブラ企業への投資のリターンなどを体系化して書籍にして出版する計画だ。

当面は経営支援やパートナーシップの実例を増やし、ゼブラ企業を社会実装していく。その先にゼブラ企業に取り組む人やサポーター、資金供給が増えるはずだ。ゼブラ企業に取り組む起業家の挑戦機会を増やしていきたい。