無人搬送車(AGV)の可能性が広がっている。組み立てセルのセルを搬送パレット上に構築し、ロボットの前にAGVで運ぶシステムが開発された。電動車いすの移動ユニットの転用で価格を下げる例もある。導入しやすく、使い方の幅が広がる。いずれも自律化を進める開発トレンドとは異なるものだ。AGVの進化から目が離せない。(小寺貴之)

Mujin 搬送パレット運ぶ

「バラ積みから部品をパレットに並べ、パレットの上で組み立てる。不具合があればパレットがエンジニアの元に送られてくる」とMujin(東京都江東区、滝野一征最高経営責任者〈CEO〉)のフェリクス・フォン・ドリガルスキシステムエンジニアは目を細める。バラ積みや組み立て用の産業用ロボットの元にAGVが搬送パレットを運んで自動車のブレーキ部品を組み立てる。物流センターでピッキングマンの前に商品棚をAGVが運ぶシステムを連想させる。

搬送パレットは一つひとつに固有の歪みがある。治具のような位置精度は保証できない。そこでロボットのハンドカメラで計測し、組み付け位置などを微調整する。バラ積みからパレット単位で組み立てるため変種変量生産が可能になった。

ドリガルスキ氏は国際ロボット競技会「ワールド・ロボット・サミット(WRS)」の製品組み立て競技で腕を磨いてきた。大会後Mujinに移籍し組み立てシステムを手がけた。ドリガルスキ氏は「Mujinではたくさんの技術者と開発し、大きなシステムに挑戦できる。WRSの経験を社会実装したい」と力を込める。

ヤマハ 車いす転用で安価

ヤマハは電動車いすの移動ユニットをAGVに転用した。電動車いすは屋外を走るため不整地に強い。工場のような床が整った環境は簡単に走破できる。この移動ユニットが2輪で40万円。ライントレースやコード認識で、自動搬送と位置識別をさせる廉価なAGVとして提案する。

ヤマハのAGV。鋳造部品を運ぶため熱や砂などに強い

開発のきっかけは工場にAGVを導入しようと検討したのが始まりだ。AGV5台のシステムで2000万円したため自作を決意した。現在は鋳物工場で鋳砂にまみれながら250キログラムの鋳造部品を日々運んでいる。

ヤマハ発動機生産本部の石井正浩主事は「生産技術部門が必要に迫られ開発した。社内で採用が広がり外販は検討中」と振り返る。システムインテグレーターへは移動ユニット、完成品がほしい顧客にはAGVとしての提供を検討している。既存のAGVより1ケタ安くなる見込みだ。

近年AGVの開発は高度なセンサーを積み、地図を描きながら走る自律化の道を歩んできた。シンプルなAGVにもまだまだ未開拓な可能性がある。安価なAGVを使いこなす知恵が問われている。