半導体工場は大型連休も操業が続く。もともと点検やメンテナンスを除いて休みなく稼働するが、足元ではコロナ禍などに伴い半導体が不足。自動車や情報通信技術(ICT)といった分野の製品の生産に影響が出ている。半導体各社は供給不安の解消に向けて生産能力増強を急いでおり、短期的には需要に追いつく可能性もあるものの、長期的視点での増産投資は継続するとみられる。(編集委員・錦織承平)

車・ICT向け 供給不安対応

半導体不足が深刻化した背景には新型コロナウイルス感染症の世界的な流行がある。英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは「新型コロナ感染拡大で自動車メーカーなどの半導体ユーザーがモノづくりにブレーキをかけたが、巣ごもり需要でパソコンが売れるなど、急に半導体が必要になった」と振り返る。

加えて、車の販売が回復すると半導体各社の生産能力は不足した。旭化成やルネサスエレクトロニクスの工場火災による供給能力の減少なども重なった。車関連メーカーは工場を止めないために「従来より2―3割程度、半導体の在庫を多く積むようになった」(南川氏)ことで状況は深刻化した。

現在は「通信基地局や産業機器などに使われる(ロジック半導体デバイスの)FPGAや、電源機器やモーター制御に使うパワー半導体が足りていない」(同)という。一方、ディスプレー用ドライバーICなど、余り始める製品も出てきた。

半導体不足の状況を受けて、メーカー各社は増産投資を続けている。特に、データセンター(DC)や第5世代通信(5G)などで伸びるFPGAや画像プロセッサーなどの先端プロセスに向けて、台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子、米インテルといった大手の投資が活発だ。

TSMCはソニーグループやデンソーも参加する半導体受託製造の新工場を2024年末までに熊本県菊陽町で稼働する。総投資額は1兆円規模を見込む。ソニーグループはイメージセンサーへの増産投資も進めており、21―23年度の設備投資額は7000億円規模となる。18―20年度実績は5746億円だった。

ルネサスエレクトロニクスは売上高に占める設備投資額の割合について、これまでの目標の5%を突破。22年度は同10%を超える水準に増やし、各地の自社工場を増強する。投資額は明らかにしていないが、1000億円規模とみられる。「先端品を中心にファウンドリーを活用して自社工場への投資を抑えてきたが、中長期の半導体需要の成長をみて、自社の前工程でも一定の供給力を確保する」(ルネサス)と、従来の方針も修正している。

NAND型フラッシュメモリーを生産するキオクシアホールディングス(HD)は、四日市工場(三重県四日市市)、北上工場(岩手県北上市)でそれぞれ新棟を完成、着工しており、米ウエスタンデジタルと共に総額2兆円を超える規模の投資を進める。

パワー半導体 ライン立ち上げ相次ぐ

パワー半導体では東芝デバイス&ストレージ(川崎市幸区)が、加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)の既存建屋内に200億―300億円を投じて300ミリメートルウエハー用の生産ラインを敷設中で、22年度下期に量産を始める。また新棟の建設も決めており、第1期は24年度の量産開始予定。第2期まで合わせると2000億円の投資になる。第2期の量産時期は未定だが、一連の投資で生産能力は現状比3・5倍に増える。

三菱電機は広島県福山市の新しい前工程工場で4月からパワー半導体の量産を始めた。21―25年度の現中期経営計画期間では前中計実績比300億円増となる約1300億円の設備投資を計画する。

富士電機は鉄道や再生可能エネルギー、電動車向けの需要増加を見込み、富士電機津軽セミコンダクタ(青森県五所川原市)に炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の新ラインを設け24年度に量産を始める。マレーシア富士電機(ケダ州)でもシリコン8インチ(200ミリメートル)ウエハー対応の前工程生産ラインを23年度に立ち上げる。ほかの国内工場や後工程拠点の投資も合わせると、19―23年度の投資額は当初計画費58%増の1900億円に拡大する見通しだ。

半導体各社の増産投資はかつてない盛り上がりを見せている。ただ、これだけの増産投資が続けば、いずれは各社の生産能力が需要に追いつく。オムディアの南川氏は「23年には能力が余るとみていたが、ロシアのウクライナ侵攻でその時期は早まるかもしれない」と指摘する。戦争による経済損失やエネルギー価格を含む物価上昇が進み、世界経済の成長が減速するためだ。

それでも「線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の先端半導体や、電動車、脱炭素関連の需要があるパワー半導体は不足が継続し、増産投資は続く」(同)という。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やICTを活用したデジタル変革(DX)に取り組もうとする企業の需要もあり、長期的な半導体業界の好調は変わらない見通しだ。今後も半導体各社の投資の動向に産業界の視線が注がれる。


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