近年、自然災害は激甚化している。加えて、石炭火力発電所の廃止などで電力供給力は低下、停電リスクが高まっている。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、家庭での低炭素化も求められる。対策の一つとして東京電力ホールディングス(HD)は、太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)、蓄電池の三つの電源を組み合わせ、人工知能(AI)を使って平時も有事も最適制御できる多機能パワコンシステムを開発した。

開発コンセプトは「停電時に5日間、電気が使えること」(難波雅之東電HD経営技術戦略研究所長)と「EVを使いやすくし需要側の電化を進める」(同)ことだ。EV用のV2H(ビークル・ツー・ホーム)ユニットや蓄電池、PVなどの制御データはクラウド上で一括管理する。

平時は三つの電源を効率的に使用し、不足する分だけ系統の電気を使うことで電気代を安くする。インテリジェンス制御機能が入っており最初から8割は最適化できる。残りの2割は家電や車の使用パターンをAIが学習し、さらに精度を上げる。クラウド上で気象予報や災害予報を関知した有事には、停電の可能性などをAIが判断しあらかじめフル充電して放電を控える。また、夜中に停電した場合でも音声モニターが「停電しましたが心配しないで下さい、何分後に復旧します」など状況を伝え安心させる。東電子会社のエナジーゲートウェイ(東京都港区)のAIシステムをベースに「そこに大きな電池が加わったと捉え、精度を上げて災害対応できるようにした」(金沢秀俊東電HD経営技術戦略研究所特命顧問)。

一方、ハード面では蓄電池は充放電回数の増加やマイナス20度Cでも使用できるよう、東芝にチタン酸リチウムイオン電池の開発を依頼し完成した。さらに「パワコンは直流でリンクする方が効率がよい」(金沢氏)ことから、この技術を有しパワコンのトップシェアを持つダイヤゼブラ電機(大阪市淀川区)と組んだ。「東電の狙いと車と家をモノづくりでつなぐわが社の戦略が合致した。“公器”としても認められる」(小野有理ダイヤゼブラ社長)と言う。

今は法律で家庭用パワコンから系統へはPVの電気しか戻せない。「将来、法改正したら蓄電池からもすぐに系統に戻すことを前提に開発した。それがダイヤと組んだ意義」と金沢氏。家庭の小さな発電所からVPP(仮想発電所)への大きな展開を視野に入れる。