東芝は2日、2030年度を見据えた中長期目標を発表した。収益性の高いデータサービス事業を伸ばし、同年度に売上高5兆円(21年度比49・7%増)を目指す。東芝は物言う株主(アクティビスト)との意見対立で経営の軸が定まらない状況が続く。状況打破のための関門が28日に予定する定時株主総会だ。島田太郎社長兼最高経営責任者(CEO)が率いる新体制は、株主の信任を得られるのか。30年度までの中長期目標と併せて、5月に公表した取締役候補が、どう評価されるかがカギを握る。(編集委員・錦織承平)

【意思疎通円滑に株主と対話】安定した経営体制重要

東芝は新しい経営方針で、デジタル技術とデータを活用した事業構造変革などの施策を成長戦略の中心に据えた。3月に就任した島田社長が、独自色の濃い成長戦略でリーダーシップを示した格好だ。2日会見した島田社長は「会社変革に向けた長期ビジョンに賛同頂き、実現に向けた詳細な計画やアクションに落とし込むことが企業価値向上につながる」と強調した。

デジタル技術の活用では、インフラやエネルギーといった既存事業のサービス化を進め、得られるデータを活用して、ビジネスを広げる。

データサービスは30年度の営業利益目標6000億円(21年度比3・8倍)のうち20%を稼ぎ出す計画。島田社長は「データサービスを収益の柱とする会社に変貌する」と意気込む。

一方、会社分割などのグループ再編については経営方針に盛り込まなかった。(複合企業体の価値が低く評価される)コングロマリット・ディスカウントの課題については「それぞれの事業から得るデータを活用してシナジーを発揮できる」と説明した。

新たな成長戦略を作った東芝だが、その実行に影を落とすのが経営体制の混乱だ。東芝は会社分割案が3月の臨時株主総会で否決され、株式の非公開化などを検討している。東芝は5月30日まで、潜在的なパートナー候補からこうした戦略的な提案を募った。その結果、非公開化に関する初期的な提案が8件、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する初期的な提案が2件あったと2日発表した。

パートナー候補の中には政府系ファンドである産業革新投資機構(JIC)も含まれているもようだ。JICが候補に加われば、国の安全に関わる「コア事業」を持つ東芝の買収に外国投資家が参加するスキームも現実味を帯びてくる。

JICを所管する経済産業省の動向に注目が集まるが、同省幹部は「まずは取締役をきちんと補充し経営体制をしっかり整えた上で戦略的に動けるようにしてほしい。非上場にするか上場を維持するかは二の次だ」と話す。非公開化の議論よりも安定した経営体制をつくることが重要との指摘だ。

島田社長には今後、取締役会との意思疎通を円滑にして、株主と建設的な対話を始めることが求められる。新たに示した成長戦略や取締役候補の人選が28日の定時総会でどう評価されるかが、次の焦点になる。

【取締役候補、「信頼」重視】社外取比率増で経営陣の監督力強く

東芝は28日、定時株主総会で、島田太郎社長兼CEOなどを含む取締役候補13人の選任を諮る。再任となる6人の社外取締役候補に新任候補7人が加わり、全体では5人増える。新任候補のうち、今井英次郎氏とナビール・バンジー氏はそれぞれ、アクティビストとされる投資ファンドのファラロン・キャピタル・マネジメント、エリオット・マネジメントの幹部だ。

5月26日に取締役候補を発表した指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏は、候補者選出について「株主との信頼再構築を重要視した」と説明。アクティビスト出身の候補2人は「ファラロンとエリオットから選んだのではなく、株主からの推薦で的確と考えたのがこの2人だった」と強調した。

一方、前社長の綱川智取締役会議長と前副社長の畠沢守氏は取締役を退任し、執行役を兼務する社内取締役は島田社長と柳瀬悟郎副社長兼最高執行責任者(COO)の2人になる。社外取締役の比率が高まり、経営陣を監督する力はより強くなるとみられる。

東芝には投資家などのパートナー候補から非公開化に関する提案や上場維持を前提とする提案が計10件集まった。定時総会後はこれらの提案内容について速やかに検討を進める方針だ。取締役候補はこうした検討のプロセスにおいて、株主と建設的な議論ができる相手と認められ、選任される必要がある。定時総会が東芝の会社のカタチを考え直すための最初の関門になる。