大陽日酸は半導体製造に不可欠な希ガス「クリプトン(Kr)」を増産する方針を固めた。現状、国内で使われるKrの9割程度を中国などからの輸入に頼っている。ほかの産ガス国はロシアやウクライナなどで、安定調達に支障が出る恐れがある。希ガスは高炉に酸素を供給する装置の副産物として得られる。今後、高炉メーカーと協議した上でKrの生産場所を固め、国内で安定供給できる体制構築を目指す。半導体のサプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化と国の経済安全保障に貢献する。

希ガスは製鉄所などに酸素や窒素を供給する空気分離装置(ASU)の副産物。大陽日酸は大分サンソセンター(大分市)に国内最大規模のKr、キセノン(Xe)の精製プラントを持ち、原料液体酸素から得られる粗ガス(Kr・Xeの混合ガス)を大分とJFEサンソセンター京浜工場(川崎市川崎区)から供給している。

国内ASUは製鉄所の更新や再編に伴い大型化が進む。大陽日酸はJFEスチール東日本製鉄所京浜地区(川崎市川崎区)の高炉休止で粗原料ガスの供給が減少する事態にも備える。2024―25年をめどに具体化を目指す。輸入ソースの多様化と合わせ、国内生産能力を増強し供給懸念の払拭(ふっしょく)に動く。

増設拠点は鉄鋼メーカーと協議した上で決める。JFEサンソセンター(広島県福山市)の福山工場(同)や同倉敷工場(岡山県倉敷市)、日本製鉄系の大分サンソセンター、同八幡サンソセンター(北九州市戸畑区)などが候補に挙がる。

希ガスはエキシマレーザーの発振用ガスなどに使われる。ウクライナ危機で市況が高騰しているほか、国内で使われるKrは相当量を輸入に頼る。世界的な半導体の増産ペースに希ガス供給能力は追いついていないとみられ、国内で複数の半導体工場が立ち上がる24年前後には供給不足に陥る可能性がある。

大陽日酸はKrで年間200万リットル程度、Xeで同25万リットル程度の国内生産能力を持つ。Krは約9割が輸入品という。現在、日本で生産されていないネオン(Ne)についても、国産化の可能性を探っていく。

Kr、Xeの主要サプライヤーは大陽日酸、エア・ウォーター、日本エア・リキードの3社。大型設備を持つ大陽日酸は、国内顧客向けXeの大半を国産品で賄っているという。ただ、業界全体では国内需要をカバーできる生産能力は日本になく、一定量を輸入品に頼っている。