住友電気工業は2030年度の長期計画で自動車部品メーカーとして有数の売上高5兆円以上(21年度比48・5%増)を掲げた。22年度も同3兆8500億円(同14・3%増)と、コロナ禍やウクライナ危機にもかかわらず高い成長を予想する。総売上高の約5割を占める同社の自動車事業。営業利益は伸び悩むが、長期には規模拡大による復調を見込む。ワイヤハーネス(組み電線)などで電動車の進化に寄与し、利益改善の難路にも挑む。(大阪・田井茂)

自動車部品メーカーで売上高5兆円を超えるのはデンソーと独ボッシュのみ。日本メーカーで見れば、これに約4兆円のアイシンが続く。デンソーとアイシンはトヨタ自動車を支えるサプライヤーの双璧だ。一方、住友電工は独立系で推定25%の世界トップシェアを握る自動車用ワイヤハーネスが強み。日系完成車メーカーに呼応し、迅速に海外生産を拡大してきた。

ワイヤハーネスの世界市場は年3兆―4兆円で住友電工、矢崎総業、米アプティブが3強。アプティブは他部品を強化しており、高品質のワイヤハーネスを短納期で供給できる日系2社は、シェア拡大の余地がある。世界の自動車市場が順調に伸びれば高成長が可能とみて、ボッシュやトヨタ系に続く5兆円企業に名乗りを上げた。井上治社長は「自動車、電力、通信の主要3事業で1兆円、産業素材などその他で5000億円伸ばせば5兆円に届く」とみる。

住友電工は07年にワイヤハーネス製造の住友電装を完全子会社化し、開発から生産までの統合も果たした。自動車業界は規模が優先され、異文化同士のM&A(合併・買収)が多い。半面、内部対立などから統合失敗や経営破綻も少なくない。そこで、技術と顧客の信頼を高める安定した経営基盤づくりを進めてきた。

ただ、自動車部品ビジネスは完成車メーカーと一体となったコスト低減が宿命。住友電工の21年度の営業利益率はワイヤハーネスが落ち込み、7・3%。経営合理化で先を行く欧米有力メーカー並みの10%に届かない。原料・物流高騰のほか、ロックダウン(都市封鎖)による生産代替を含むコストもかさんだ。迅速な価格転嫁の正念場を迎えている。

30年度に営業利益段階のROIC(投下資本利益率)で10%以上(21年度比5・6ポイント増)を目標とするが、道は険しい。ワイヤハーネスの販売増による原価抑制や、付加価値の高い通信・電力ケーブル事業の拡大などが達成のカギになる。井上社長は「電力と通信のROICは上昇している。自動車事業を回復させ、10%に高めたい」と意欲を示す。

自動車の電動化も利益率を伸ばす好機になる。電動車の低電費や高出力を可能にする軽量ワイヤハーネスを供給できれば、付加価値を訴求できる。自動車の通信高速化でも得意のケーブル技術を生かせる。次世代車のニーズを先取りする開発力や提案力を高められるかが、成長の試金石となる。5兆円を視野に、規模・質ともに世界トップクラスのメガサプライヤーを目指す。