地球温暖化を助長する二酸化炭素(CO2)を化学品や燃料に作り替えるカーボンサイクル技術が脚光を浴びている。SECカーボンはCO2からリチウムイオン電池の材料をつくる技術を確立した。2021年10月、開発を発表すると株価が跳ね上がった。

同社は1934年、昭和電極として創業した。戦後、人造黒鉛電極の製造を開始し、今ではアルミニウムの製錬に必要なカソードブロックで世界4割以上のシェアを持つ。06年に今の社名となった。

話題となった技術はCO2を分解し、取り出した炭素で黒鉛を製造する。同志社大学発ベンチャー企業のアイ’エムセップ(京都市下京区)と18年から共同研究し、溶融塩電解技術でのCO2の分解に成功した。

コークスなど化石資源を使わずに黒鉛を生産できるだけでも脱炭素に貢献するが、CO2由来の黒鉛はリチウムイオン電池材料に適しており、引き合いが殺到している。

電池の充電性能向上は、負極材料の黒鉛粒子のきめ細かさが鍵となっている。SECカーボンの経営企画室の矢野賢氏は「CO2由来の黒鉛は、できあがった瞬間から粒子が細かい」と強調する。しかも不純物がない高品質な黒鉛であり、性能向上が期待できる。

SECカーボンは新たなカーボンリサイクルを自社の京都工場で始める計画だ。化石燃料の燃焼で生じたCO2を回収し、黒鉛を製造する。その黒鉛を採用したリチウムイオン電池を京都工場に設置。再生可能エネルギーの電気を充電し、操業に必要な電気を賄う。「CO2を減らしながら工場を動かす」(矢野氏)構想だ。25年までに試験機を稼働させ、30年には年1トンの黒鉛を生産する。

量産技術を確立した後、他社に黒鉛製造プラントを提案する計画もある。燃料の燃焼工程がある工場にとって脱炭素は難題だが、このプラントがあればCO2の削減だけでなく、資源供給もできる。老舗企業のカーボンリサイクル技術が、日本の製造業を脱炭素へ導く。