1兆円を超える負債を抱え私的整理の一種「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」を申請したマレリホールディングスの再建案に対し、金融機関の不信感が高まっている。スポンサー企業に現在の親会社である米投資ファンドのKKRが選定されたことに加え、中国・上海のロックダウン(都市封鎖)や半導体不足などで外部環境が悪化し、再建案の実行に不透明感が増しているためだ。マレリと支援機関との間で、有利な条件を引き出すための駆け引きもあり、24日の債権者会議でADRが成立するかはいまだ予断を許さない状況だ。(石川雅基、編集委員・水嶋真人、日下宗大)

「どの銀行も大なり小なり不信感を持っている」。ある大手銀行幹部はKKRが再び支援企業になることについてこうこぼす。マレリの経営に一度失敗したKKRが、再度経営の手綱を握るためだ。

マレリが5月31日に支援金融機関に示した再建案ではKKRから第三者割当増資を受ける計画。取引する26金融機関には、約4500億円の債権放棄を求めた。事業再生ADRの成立には、24日に開かれる債権者会議で、全金融機関から再建案に対して同意を得る必要がある。国内主力行は再建案に同意する方向だが、出方が読みづらい中国など海外行も含まれており、懸念は拭いきれない。

閉鎖したマレリの宇都宮工場(当時、グーグルアースより)

マレリは24日に金融機関からの同意が得られなかった場合「続会を設けるか、法的整理に移る」(同社幹部)方針を示す。ただ、別の大手銀行幹部が「法的整理をするよりは各債権者が合意したうえでマレリの再生を進めた方が良い」というように、債権回収の主導権を握れない法的整理には支援金融機関も後ろ向きだ。

続会となった場合、マレリは再建案の修正には応じない考えで、法的整理も辞さない強気の姿勢を貫く。事業再生に詳しい弁護士は「ADRを成立させたい債務者からすれば、不成立の可能性があれば修正に応じるケースが多い。今回のように事前に修正に応じないと伝えるのは一つのパフォーマンスに見える」と指摘する。法的整理をにおわすことで早期決着につなげたいマレリの思惑が透けており、金融機関が不信感を募らせる一因と見て取れる。

再建に向けたマレリの事業戦略についても厳しい声が上がる。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは「レガシー化した製品を多く抱え込んでいる」とした上で、「力を入れるライティング、エレクトロニクス、インテリアなどは今後成長が見込まれる有望な事業だけに、仏フォルシアをはじめ競合企業も強い」と指摘する。工場の統廃合やリストラなどで費用の圧縮を進めた後の成長戦略は競争力に乏しく、再建案の実効性への懸念がくすぶる。

マレリの売上高のうち、日産自動車向けが約3割、欧米自動車大手ステランティス向けが約2割を占めており、両社で過半に達する。ある銀行幹部が「マレリは日産と取引していることが大きい」と言うように両社との取引が維持できるかが生命線となっており、再建への必要条件となりそう。マレリに対し銀行団がどのような判断を下すのか注目される。