三井住友フィナンシャルグループ(FG)とSBIホールディングス(HD)は23日、包括的な資本業務提携で基本合意したと発表した。三井住友FGがSBIHDに約1割を出資。両社のグループ会社が持つ各種金融サービスをデジタルでつなぎ、個人向け金融領域で国内最大級の共同経済圏を生み出す。一方、三井住友FGの後ろ盾を得るSBIHDには、個人向け金融以外の事業で得るメリットも期待される。(編集委員・川口哲郎、同・水嶋真人、日下宗大)

【財務基盤安定化】個人向け両社で「共同経済圏」

三井住友FGがSBIHDの総額796億5000万円規模の第三者割当増資を引き受ける。23日にオンライン説明会を行った三井住友FGの安地和之企画部長は「SMBC(三井住友銀行)―SBI連合の象徴として持ち株会社間の資本提携を先行して行う」と説明する。

SMBCグループとSBIグループは2020年4月に戦略的提携で基本合意していた。さらなる連携強化に向けたきっかけが、三井住友カードでSBI証券の投資信託を買えるサービスだ。開始約1年で積み立て設定金額100億円超、口座数26万超となり「非常に大きな成果を得た」(安地部長)。

足元ではキャッシュレス決済や資産形成でデジタル化が進む。異業種からの参入も相次ぐ中、「貯蓄」「消費」と「投資」をデジタルで融合した新サービスで差別化する。具体的には銀行口座、カード決済、オンライン証券の機能をアプリケーション(応用ソフト)ベースでシームレスにつなぐサービスを22年度中に始める。

三井住友銀行の2700万人、三井住友カードの5000万人、SBI証券の850万人という顧客基盤を組み合わせた「共同経済圏」を作る狙いだ。

SBIHDが三井住友FGから出資を受ける狙いは、財務基盤の安定化だ。2021年にTOB(株式公開買い付け)で傘下に加えた新生銀は、公的資金3500億円の債務を抱える。SBIHDにとって「三井住友FGとの関係強化は、調達面でのリスク要因を軽減する」(辻野菜摘三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリスト)と肯定的に受け止められている。

事業面ではネット証券やデジタル証券の分野のほか、幅広い分野の提携効果を見込めそうだ。その一つが地域金融機関と戦略提携する「第4のメガバンク」構想だ。これまで傘下のSBI地銀HDを通じ地銀9行と資本業務提携し、目標の10行まであと一歩まできた。

【第4のメガバンク構想に弾み】新生銀と地銀で商機拡大

新生銀グループと地域金融機関、SBIHDとの三位一体による「トライアングル戦略」として、サービスや金融商品、投融資などを相互活用するビジネスモデルを描く。この枠組みに三井住友FGの金融商品などが加わることにより、地銀を支援する基盤が厚みを増す。

すでに三井住友カードとの提携では、投信積み立てサービスで成果を出し、北尾吉孝SBIHD社長も「お互いウィン・ウィンになったアライアンス」と高く評価している。

SBIHDは2―3年後を見据えた重点戦略を立てた。この中で「地銀の第2幕をやり遂げる」(北尾社長)と力を入れるのが、次世代勘定系システムやデジタル変革(DX)データベースなどの共通化だ。地銀各行は固定費の削減や取引先の支援体制拡充などが期待できる。三井住友FGの知見やノウハウが得られれば、地銀ビジネスの側面支援になりうる。

今回のSBIHDの三井住友FGからの出資受け入れは、新生銀の経営にも大きな影響を与えそうだ。同社は第4のメガバンク構想でプラットフォーマー(事業基盤提供者)と位置付けられている。今後、SBIHDと組む地銀に対して、さまざまなサービスを提供し、新生銀と地銀の双方で商機拡大を狙う。

例えば新生銀は強みであるストラクチャードファイナンス(仕組み金融)事業で地銀を支援したり、グループのリース会社などを通じ地銀にノンバンク機能を提供したりする構想を描く。

こうした取り組みが成功し収益基盤を強化できれば、新生銀の最大の懸念事項である公的資金の返済の早期実現が見えてくる。

【SBI証券 ネットで1強】シェア拡大原動力 低コスト売買手数料

コロナ禍でSBI証券が、強さを見せつけた。急増するNISA(少額投資非課税制度)の口座開設の受け皿となっているネット証券の中でも、低い売買手数料を武器にSBI証券が群を抜く。伸び率は業界トップで、3月時点で282万口座を達成した。

ネット証券のシェアはSBI証券と楽天証券の2強に集約しつつある。SBIの22年3月期純利益は400億円と楽天の約4・4倍となり、業績は1強の構図が鮮明だ。

一方、三井住友FGは証券会社にSMBC日興証券を抱えているが、対面営業が中心で顧客層はシニアに偏る。若年層向けネット証券を取り込むことで、補完と相乗効果を見込めると判断した。

三井住友FGは20年にスマートフォン専業のSBIネオモバイル証券に20%出資したが、金額も小幅にとどまった。SBIHDへの出資はより踏み込んだ措置となる。ただ出資比率は1割と、経営への関与は一定の距離を置く。三井住友FGの思惑通りに提携効果を得られるか予断を許さない。


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