5月、不動産取引を変える改正法が施行された。これまで書面や対面を前提とした賃貸借や売買にまつわる契約がオンラインで完結するため「ネット不動産時代の到来」と称されるインパクトがある。2013年創業のスタートアップ、GAテクノロジーズはこうした潮流を先取りしたビジネスモデルをすでに確立。その原動力となるのが人工知能(AI)活用戦略だ。

不動産事業には開発や流通、管理、賃貸などさまざまな領域があるが、中でもデジタルとの親和性が高いと同社が着目するのは投資運用。データを駆使して利回りやリターンを算出する姿は、デジタル化が進む金融・証券の世界に近い。

同社はまず、投資用中古マンション仕入れの物件選定にAIを活用。日常的に目にする図面入りの不動産広告をAIが自動で読み取り、これまで500万件に上るデータを積み上げてきた。立地エリアや築年数、駅からのアクセスなどの要素をパラメーターとして解析すれば査定価格も瞬時にはじき出す。

投資用物件は賃料設定がカギを握る。だが、これまでは担当者による経験や勘によるところが大きく、しかも必要な物件のみを取捨選択して登録していただけに、今となってみれば、データという貴重な資源をみすみす手放していた。

AIで高精度の賃料予測も実現した。これにより長期保有における家賃下落リスクも勘案した資産評価が可能になり、安定運用が見込まれる物件選定につながるという。立地エリアの住環境を、さらに精緻にスコアリングする上では、国や地方自体が公開する「オープンデータ」の活用促進に向けた機運も追い風となっている。

テクノロジーを冠する社名が象徴するように、技術で業界に革新をもたらすことを理念とするだけに約700人の社員の約3割をエンジニアが占める。AIの開発は多彩な背景を持つ人材で構成される専門組織「AI Strategy Center(ストラテジー・センター)」が担う。稲本浩久室長も大手OA機器メーカーで画像処理技術などに携わった経歴の持ち主。「事業そのものに深く関わりたい」との思いから経営に参画した。

暮らしと密接に関わりながらも構造的な変化とは無縁だった不動産の世界。それゆえに、デジタル技術や新たな着想がもたらす価値、可能性は想像以上に大きいのかもしれない。(編集委員・神崎明子)