食品製造分野でロボット化が加速している。導入の動きは以前からあったが、多品種対応の技術やコスト面で課題があり、浸透していなかった。しかし最近は多品種対応を可能とする人工知能(AI)や画像処理技術が発達したほか、コロナ禍での人手不足の深刻化でコストが見合うようになり、導入の壁が低くなりつつある。2022年は食品製造のロボット化の“始まりの年”になるかも知れない。(編集委員・嶋田歩、同・土井俊、増重直樹)

【弁当・総菜業界向け】人間との協働スタイル提案

アールティ(東京都文京区)は、低価格要求が強い弁当・総菜業界向けに、人間とロボットの協働スタイルを提案する。野菜サラダの中央に見栄えのする赤色のプチトマトを乗せるといった複雑な作業は人が担い、ロボットはから揚げやフライを容器内に指定個数、入れるなどの単純作業を担当する。ロボット「フードリー」は双腕型で人と接触しても安全な仕様だ。

ロビット(東京都板橋区)はカット野菜の工場向けに、レタスの芯を1株ずつくりぬいて除去するAIカットロボットを開発。この作業は従来は人手で行っていたが、くりぬく範囲に関し作業者ごとにムラが生じるなどの問題があった。ロビットのロボットは可食部を多く残す切り方を、個々のレタスに合わせてAIが自動決定。「ムダが少なくなり、野菜歩留まりが向上する」と新井雅海社長は胸を張る。

コネクテッドロボティクス(東京都小金井市)、TechMagic(テックマジック、東京都江東区)は、ポテトサラダなどの総菜盛り付けロボットを、それぞれ開発。ポテトサラダは不定形で粘着性が高いため、これまでロボット化が難しかった。3次元の距離画像センサーやAI、新開発の食品用グリッパやハンドで難題を解決した。コネクテッドロボはこれ以外にハンバーガーロボットやそばゆでロボット、テックマジックはパスタロボットを開発済みだ。


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【金属部分にステンレス採用】洗浄清掃後に液剤残留せず

大手ロボットメーカーも耐食性や衛生性を高めた機種で需要取り込みを狙う。ファナックは、ロボット本体に露出する金属部分に耐食性に優れたステンレスを採用したパラレルリンク型ロボットを8月に発売する。オールステンレス仕様が目を引く。ロボット表面は凹凸や平面を減らし、洗浄清掃後に液剤が残留せず流れ落ちやすい構造を採用。細菌などに対して適切な衛生管理が行えるようにした。包装前の生肉をトレーに載せ整列させる工程などで利用を見込んでいる。

安川電機は21年10月に食品加工向け小型ロボット「モートマン―GP8」を投入した。塗料による表面処理ではなく耐食性を向上したメッキを採用、外観のボルトも耐食性に優れたステンレスボルトを使った。塗装が剝がれることで生じる塗装片の混入リスクをなくすほか、さまざまな洗浄液による清掃への対応を狙っている。食品加工工程における食材の搬送や梱包(こんぽう)などの用途を想定する。

食品機械メーカーが事業拡大を狙う動きも出ている。ソディックは23―24年にかけて、約11億7000万円を投じて加賀事業所内(石川県加賀市)で食品機械の新工場建設と既存工場改修を計画。主力の製麺機と米飯製造システムの生産体制を強化するとともに、新たにおにぎりなどの米飯調理品や総菜、製菓といった生産加工機械分野に参入する。

日本国内では近年の中食市場の成長に伴い、総菜向け機械は1000億円の市場規模があると言われる。神野久彦上席執行役員は「その市場に出ていく」と意気込む。

また富士電機はモーターやポンプなど回転機の故障を未然に防ぐ故障予兆監視システム「Wiserot(ワイズロット)」を展開する。食品工場の自動化が進む中、こうした安定稼働を支えるシステムの需要も広がりそうだ。

【人手不足が追い風に】自動化導入は必須条件

「食品業界の人手不足は1年後に、より一層深刻化する」。ロボットシステムを手がけるFingerVision(フィンガービジョン、東京都文京区)の濃野友紀社長は警鐘を鳴らす。これがロボット化の追い風となる。

食品業界では、作業工程の多くを人手に依存してきた。電子部品のように同一のパーツが整然と流れる作業工程と異なり、加工食品や生鮮食品の工程は対象物の大きさ、形、色などがバラバラで自動化が難しかったからだ。さらに商品は安さが絶対条件とされ、食品業界は低賃金の労働者に依存してきた。

しかしコロナ禍で、食品業界の現場を支えてきた出稼ぎ外国人の訪日が激減した。現在は徐々に再開しているものの急激な円安もあり、「もはや募集に対し、十分な人数の外国人労働者が日本へ来てくれる状況ではない」と関係者は口をそろえる。

富士電機が21年6月に食品製造業従事者に実施した調査(有効回答数206人)では、人手について75・8%が「不足している(非常に不足、やや不足を含む)」と回答した。こうした状況で濃野社長は「好むと好まざるとにかかわらず、ロボットや自動化機械導入は食品業界にとって事業を続けるうえで必須条件になる」と先を見通す。世界の食品産業用ロボットの市場規模が、28年までに20年比3・1倍の53億1000万ドル(約7324億円)に拡大するとの予測もある。

【サプライチェーンリスク】最終検査工程など国内回帰

またコロナ禍やウクライナ危機で高まったサプライチェーンリスクや地政学リスクも食品業界に自動化を促す。X線異物検査機をアンリツの担当者は「これまでタイや中国で生産していた食肉加工を日本国内へ移す動きが出ている」と明かす。

冷凍フライドチキンや白身魚のフライは加工人件費が安かったこともあり、タイや中国で行うケースが多かったが、最近の円安も加わり、加工工程や最終検査工程を日本へ戻す動きが強まっているという。しかし日本では高齢化問題もあり、食肉加工に携わる人材を十分に確保することが難しい。

花木工業(東京都台東区)は食肉加工場向けに、豚足処理ロボットを開発している。コンベヤーで運ばれてくる豚は1頭ずつ足の長さや位置、身体の向きが異なる。これをAIや画像処理装置で識別、規定位置で正確に足を切り落とす。海内栄一社長は「現場人手不足は待ったなし。食肉加工を国内へ戻す動きが追い風になっている」と話す。