田村薬品工業(大阪市中央区、田村大作社長)は、2019年に設置した紀ノ光台工場(和歌山県橋本市)で、医薬品製造の自動化を進めている。その中核として、錠剤を形作る打錠とその後の表面のコーティング、検査工程を5台のハンドリングロボットが担う。作業者が製造現場に入る時に異物を持ち込む「交差汚染」のリスク排除が狙いだ。(編集委員・安藤光恵)

ロボットを導入した紀ノ光台工場

田村薬品は自社製品のほか、医薬品の受託事業にも力を入れている。その中で、紀ノ光台工場を最先端の製造設備を採用した医薬品製造の自動化拠点に位置付ける。19年に同工場最初の建屋となるA棟を完成し、将来の新棟建設用の敷地も確保済みだ。最新設備の一つとしてハンドリングロボットを導入した。

同工場では21年からバリデーション(実生産に向けた検証)を進め、3月から本格生産をスタートした。年内にほぼフル生産になることに加え、A棟内の拡張ラインの仕様検討に入る予定。拡張後の生産能力は同棟だけで年10億錠となる。

ハンドリングロボットの導入を実現できた背景には、ロボットが扱いやすい独自の小型容器を採用したことがある。同容器は日揮と六菱ゴム(大阪市北区)が共同開発した、ふたの縁に取り付けたチューブ内の圧力変化で開閉する「BLAT」システムを搭載。ロボットがバルブを操作することでチューブ内が陰圧になり、ふたが開く仕組み。ロボットアーム先端にある吸盤でふたを持ち上げ、製品の出し入れが終わるとチューブを常圧に戻し、密閉状態とする。

約5万回の開閉耐久試験をクリアしており、長期間の使用ができる想定だ。現在260缶を保有しており、ライン拡張後は300缶以上の追加を予定している。

容器には側面を1周するようにバーコードが取り付けてあり、どの角度からも読み取れる。打錠後やコーティング後、検査後など、各容器の中身の状態を識別符号で容易に管理できる。

また、小型容器を使うことで「小ロットの製品に対応しやすく、自重で錠剤が欠けるリスクも少ない」(秋山利仁工場長代理)という。錠剤の割れや欠けのリスクをさらに減らすため、打錠装置から出てきた錠剤を受け始めるときにはロボットが容器を斜めにするなどの工夫もしている。

誤動作などを防止するため、粉じん対策としてロボット用の無塵(じん)衣を着用。たるみなどを計算し、動きを妨げない仕立てにしている。

これまでの自動化は容器の着脱やパレットへの積み下ろしなどが中心で、人の介在や大掛かりな設備が必要だった。ロボットと新規の小型容器、自動クレーンの活用で自動化にこぎ着けた。「夜間も稼働しやすくなり、力仕事も減った。今後、(ラインの省人化で、他業務の担当が可能になるなど)工場で働く社員の多様化が進むことも期待できる」(同)としている。


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