住友ベークライトは、機能化学品の生産ラインの自律制御や異常予兆検知などに人工知能(AI)を活用している。国内4工場の主要製品の生産ラインで、主工程の自律制御を実現。機能化学分野では難しいとされていた生産設備のオートパイロット(自律制御)化に取り組み、モノづくりの高度化と課題克服につなげる。

NECと協業し、一定数量を品目ごとに連続生産する「バッチ連続型生産ライン」のデジタル化を推進してきた。取り組みの中心に位置付けるのが、AIを活用した生産ラインの自律制御だ。封止材料や成形材料などの生産時には、基材や添加剤などの原料を混ぜて成分を均一に分散し、一定の条件下で反応させる。成形材料は品番ごとに求められる特性が異なり自律制御は難しいとされていた。ただ、人材不足や高齢化に伴い、熟練技術者は減少。さらに開発競争の激しい分野では、生産ラインの立ち上げ早期化などの対応が求められていた。

2018年からプロジェクトチームを組成し、既存設備のデータ収集や、IoT(モノのインターネット)機器の実証などに着手した。データ収集は工場向けIoT基盤「エッジクロス」を活用。温度、速度、圧力など装置の稼働データや、製品の計測データなどをリアルタイムで可視化した。

工程各所に取り付けたセンサーから装置の稼働情報や、品質評価に関わる情報を収集し、AIで自動的に分析する。大量のデータの中から〝いつもと違う〟挙動を検知する「インバリアント分析技術」を異常予兆の検知に活用。さらに、熟練技術者の経験に基づく装置制御の暗黙知をAI分析でルール化して登録するなど「製造工程の自律制御と品質安定化を両立できる。新規・既存ラインともに運用可能だ」(コーポレートエンジニアリングセンターの桜井貴弘AI/IoT推進部長)と強みを語る。

AIを活用した自律制御ラインは、マザー工場に位置付ける国内4工場で運用されている。「従来の半分程度の人員で操業可能なラインもある。より創造的な仕事に人材を再配置したい」(稲垣昌幸副社長)と手応えを示す。今後は国内工場の仕組みをアジアや北米、欧州などの海外拠点に展開する計画だ。稲垣副社長は「各拠点の生産性を高め、国際競争力を強化する。どこにいても世界中の工場の状況が把握でき、サプライチェーン(供給網)対応が素早くできることが理想だ」とモノづくりの将来を見据える。(大川諒介)