人工知能(AI)を活用して五感の中でも未知な領域だった「嗅覚」を分析するツールの開発が加速している。香りは目に見えず曖昧で、人それぞれ感じ方も違うため、マーケティングが難しい領域だった。人の感覚や経験に頼ることが多い香りの判別を、高度なAI分析で行うことで、生産性や品質の向上につなげたり、印象を言葉で可視化したりすることを可能にしている。(山下絵梨)

SCENTMATIC(セントマティック、東京都渋谷区、栗栖俊治代表取締役)は、香りと言葉を相互に変換するAIシステム「KAORIUM(カオリウム)」を開発した。曖昧で捉えにくい香りの印象を言葉で可視化したり、ある言葉にひもづく香りを導き出したりできる。

同社はインターネット上の膨大な言語表現と、人々の香りの感じ方を学習したこのカオリウムに、日本酒の風味情報とユーザーの感性データなどを融合させることで、AIがぴったりのお酒を提案する新ツールを生み出した。ユーザーと日本酒との相性度を計算し、好みの日本酒を推薦する。

スーパーマーケットで実証実験を行ったところ、導入期間中に表示された商品を対象とした効果は、導入前の月と比較して、日本酒の販売数が55%増、日本酒の売り上げが56%増を達成した。これまで経験と感性のある利き酒師やソムリエだけが可能だった接客体験を、AIが小売店の店頭で実現した。この技術の活用はフレグランスの世界にとどまらず、飲食体験や購買体験など「さまざまな分野に新しいビジネスチャンスを生み出す」(同社)と期待を寄せる。

レボーン(東京都港区、松岡広明代表取締役)は、独自開発のにおいセンサーとAIを活用し、世界中のにおいデータを蓄積した「においデータプラットフォーム」の構築を進める。これを元に、においによる水質管理や香料の劣化の測定、飲料・食品の加工過程における品質評価、トイレのにおい評価、清掃の効果評価のほか大学との共同研究などを展開している。

においの分野は人間の嗅覚メカニズムに未解明な部分が多く残ることを受け、評価の科学的な再現が難しく、専門性の高い人材の登用が必要不可欠だった。同社はAIを活用することで、人によって行われるにおい分野での評価を科学的に再現し、生産性や品質の向上につなげている。