複合機の消耗品「トナー」を手がけるリコーの沼津事業所(静岡県沼津市)。同事業所では、トナーをボトルに充填してそのボトルを梱包箱に詰める一連の作業をロボットが担う。ロボットの導入により、従来比5倍の生産性を実現した。ただ、同社にとってそれらロボットは生産のデジタル化・自動化を促進するための一つのツールに過ぎない。工場全体のデジタル化、無人化に向け、今後もデジタル技術の活用を進める。(張谷京子)

「トナーは車のガソリンと一緒。サプライ(供給)を切らしてはいけない」。こう使命感を強調するのは松井一幸第二トナー事業センターDM開発室長だ。消耗品であるトナーは、常に安定した品質で供給することが不可欠。一方、労働人口の減少で、工場の人員確保や技術伝承が難しくなっている。リコーにとって、ロボット活用は、そんなジレンマを解消する一つの施策になっている。

沼津事業所では2014―17年にかけて、ロボットを導入。現在、トナーのボトル充填から梱包までを行う一連の工程でロボットを活用するが、全7ライン中、3ラインを全自動としている。1ラインにつき1人オペレーターがつき、部品の供給やトラブル対応は人が担うものの、ほぼ全ての作業をロボットが行っている。

1ラインにつき、ロボットの数は13台。主に6軸ロボットを使用している。ロボットはトナーをボトルに充填するほか、プラスチック箱に収納している部品を直接ピッキングしたり、作業者の代わりに仕掛品を振って中身の漏れがないかを検査したりする作業も担当。また、トナーを詰め終わったボトルを段ボール箱に収納する梱包工程では、ロボットが段ボール箱を組み立てて、ボトルを梱包箱に収納する。

ロボットがプラスチック箱に収納している部品を直接ピッキングする

残る4ラインの全自動化について松井室長は「大量生産が必要なメーン機種の生産は全自動が向いている。ただ少量多品種の製品に関しては、逆にロボットを導入すると効率が悪くなる」との認識を示す。少量多品種の生産を全自動化すれば、むしろ小回りが利きにくく不便。あえて人が手動で行う工程を残すことで、より効率的な生産を実現している。

リコーは、ロボット導入後も「自動化」に向け歩みを進めてきた。例えば、部材供給遅れや部材の詰まりなどのロスを可視化・分析するツールを約2年前に導入した。同ツールは、各部品に2次元コード「QRコード」を付与して、各工程で部品の通過履歴を管理。生産ラインで発生するロスタイムの原因を検証する。

このようにリコーは、これまでロボットやデジタルツールの活用で、工程の自動化を加速してきた。ただ、それは工程ごとの自動化に限った話。今後は「工場全体を無人化してスマート工場化を目指す」(松井室長)。例えば、トナー生産工程と、トナーをボトルに充填する工程の両方のデータを連携して、余剰在庫を最適化することなどを想定。生産効率向上に向けリコーの挑戦は続く。