部品加工を手がける兵庫精密工業所(神戸市兵庫区、阿倉和哉社長)が、自社工場での産業用ロボット導入を強化している。特徴的なのは、その導入に当たり、システム構築(SI)を可能な限り自社の社員で進めていること。それによって、設定変更や修理などに対応しやすくする狙いだ。中小企業自身がロボットSIノウハウを蓄積し実践することで、柔軟な生産体制が整備できることを示そうとしている。(神戸・園尾雅之)

2017年ごろに篠山工場(兵庫県丹波篠山市)などでロボット導入を本格化。その際、外部のシステム構築事業者(SIer)の協力を最小限にとどめた。システムを自分たちでしっかり把握すれば、ちょっとした設定変更にも柔軟に対応できるからだ。それでも、技術的な困難に直面する。だが阿倉和哉社長は「(社外にSIを依頼して)ブラックボックス化したくない。そういう点こそ、社内で切磋琢磨(せっさたくま)して進める」と語る。こうした考えが現場の生産性向上に不可欠だという。

篠山工場での実績を踏まえ、22年4月には本社に「SIセンター」を設立。同拠点を軸に、生産ライン最適化の提案など新サービスの事業化を目指している。ロボットや工作機械などを配備し、自社工場のロボット化の事前検証などを進めながら、SIやデジタル変革(DX)関連の人材を育成する方針だ。

このほど、社南坊工場(兵庫県加東市)の4輪車向け部品の加工工程において、新たにロボットラインを構築することになり、早速SIセンターを活用した。ロボットが、トレーにある加工対象物(ワーク)をつまみ上げて工作機械の中に入れ、加工後に取り出して再びトレーの上に置く―。こうしたロボットの一連の動作について、ラインを構成する周辺機器と干渉しないかなどを、まずはシミュレーションソフトウエアで確認。その上で、SIセンター内のロボットでも動作検証した。これにより、実際に工場で構築作業を進める際の手戻りを、できる限り少なくした。

シミュレーションソフトウエアを使って、社南坊工場のロボット化を事前に検証することで、現場での構築作業の手戻りを少なくした

同ロボットは7月に稼働した。検証では対象の加工工程の作業人員を従来の2人から0・5人に削減できた。夜間も連続稼働が可能で、生産効率が大幅に向上した。

SIセンターでは3Dプリンターも活用。社南坊工場の案件では、必要なロボットハンド関連部品を3Dプリンターですぐに作成でき「トライアンドエラーの期間がぐっと縮まった」(阿倉将吾マネージャー)という。

人手不足が深刻化する中小企業では、ロボット化による生産性向上の効果は大きい。ただ、その構築をSIer任せにし過ぎると、結果的にロボット本来の性能を十分に生かせなくなる恐れがある。兵庫精密工業所の取り組みは、そんな危機感の表れとも言える。

7月からはSIセンターで大学生インターンシップ(就業体験)を受け入れ、同拠点の認知度向上を図っている。将来は他社のロボットSIを請け負う新事業の展開も視野に入れる。