IHIの主力事業の民間向け航空機エンジンが復調している。コロナ禍からの経済再開により単通路型の小型機の運航が回復し、これらに搭載されるエンジンのスペアパーツが伸びている。生産や修理・整備(MRO)を担う国内工場は多忙な状態で、自動化やデジタル変革(DX)で効率化しようとしている。(戸村智幸)

IHIはエンジンの国際共同開発に参画し、主要部品を製造している。エンジンは本体を低価格で販売し、スペアパーツを定期的に販売して収益を得るのがビジネスモデルだ。航空機が運航しなければスペアパーツが売れないため、コロナ禍は大打撃だった。事業の売上高は2019年度(20年3月期)は2224億円だったが、20年度は1017億円、21年度は1233億円と低迷した。

状況は好転した。欧エアバスの「A320neo」など小型機は各国の国内線中心のため、運航状況がコロナ禍前の8割程度に回復したとIHIはみる。藤村哲司執行役員航空・宇宙・防衛事業領域副事業領域長は「スペアパーツの需要が計画通り伸びている」と手応えを見せる。22年度の事業売上高は2090億円を見込む。

工場は活況だ。相馬第一、第二工場(福島県相馬市)、呉第二工場(広島県呉市)で部品を製造し、瑞穂工場(東京都瑞穂町)で組み立てており、いずれもフル生産に近い状態だ。

MROは瑞穂工場のほか、21年に稼働した鶴ケ島工場(埼玉県鶴ケ島市)が担う。延べ床面積約2万3000平方メートルと広大な鶴ケ島工場に集約する構想を掲げており、「A320」などのエアバス機に搭載される「V2500」エンジンは既に移管した。A320neoに搭載の「PW1100G―JM」エンジンは23年度初頭に移管する計画だ。

工場への設備投資は20年度、21年度は抑えたが、今後は積極的に投資する。部品製造では自動化を推進する。多品種少量生産の上、複雑な形状の翼の加工などをベテランに頼っており、これらの工程を自動化する考えだ。工作機械メーカーに特殊仕様の機種を発注し、今後導入する予定だ。

MROではDXを加速する。各工程の記録のデジタル化に着手しており、早期に完成させる。エンジンは約30万もの部品から成り、MROの範囲や対象はエンジンごとに異なる。しかも、約120日間と長期間にわたる。そのため台数が多くなると各エンジンの作業工程が混乱しやすい。デジタルデータで把握し、作業ミスを防止する狙いだ。


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