ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)市場が17年連続で縮小する中、クラフトビールは21年に17年比で1・7倍と市場を拡大している。クラフトビールは購入者の中心が20―30代の若年層というのも特徴だ。クラフトビール大手のヤッホーブルーイングの井手直行社長に今後の戦略を聞いた。

―足元の市場動向をどのように捉えていますか。

「クラフトビールはコロナ禍の巣ごもり需要の中で、せっかく家で飲むならちょっといいものを飲みたい、と選ばれた。当社はコンビニエンスストアが販路の中心なので、コロナ禍のプレミアム志向の需要を取り込んだが、クラフトビールメーカーの中でも、飲食店や観光地のおみやげがメーンの業態は減収になっている」

―さらなる販売数量拡大の戦略は。

「ビール類市場におけるクラフトビールのシェアは現在1・5%程度。だが、ここ数年の成長やクラフトビール市場が急速に拡大している米国の動向、飲用者のボリュームゾーンが30代と若年層を取り込めていることなどを考えると、今後も伸びるとみている。当社はビール類市場の1%のシェアを目標としており、今は若干下回っている状況。目標達成にはどこでも商品を買えるように販路を広げることが必須。売り上げ拡大で得た収益をマーケティングに充てて強化したい」

―販売数量の拡大に対し、生産体制をどのように強化しますか。

「既存ブランドの販売が伸びていて、8月に発売した『正気のサタン』も好調ため、佐久醸造所の生産能力は年内にいっぱいになってしまうとみている。ただ、ビールは設備産業なので、工場を新設するとなると設備が大規模になり、今の売り上げの何倍もの設備になってしまう。現状は佐久醸造所のリニューアルで最新の技術を取り入れながら自動化などで効率化し、工夫して対応することになる」

―業務提携しているキリンビールに製造委託が増えるのでしょうか。

「キリンビールにはいくつか生産を委託しているブランドがあるが、作ってもらうにはある程度の数量が必要だ。作ってもらえる量をコンスタントに出荷できるブランドを作る必要がある。現状、すぐに作ってもらえるブランドはないので、正気のサタンなどの拡販を進めたい」

【記者の目/ビールを変える象徴的な動き】

大手ビールメーカーが若年層の取り込みに苦慮する中、ヤッホーブルーイングは独特の商品名や味のバリエーションなど、大手と一線を画したマーケティングで徐々に支持を拡大している。ビール類市場全体のシェアはわずかだが、ビールという飲み物の位置付けの変化を象徴する動きと言えそうだ。(高屋優理)

井手直行社長