消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が、1年後の2023年10月に始まる。しかし、小規模企業や個人事業主などで対応が大幅に遅れている。日本商工会議所など中小企業関連団体は「このまま導入すれば大混乱になる」として、政府・与党に仕組みの簡素化や導入の延期を求めている。

インボイス制度は適格請求書(インボイス)を用いて仕入税額控除を受ける制度。消費税を扱う企業・個人事業主は23年3月までにインボイス発行事業者の登録申請をするほか、10月までに経理システムの改修も必要になる。

問題になるのがこれまで消費税の申告を免除されていた売上高1000万円以下の免税事業者の存在だ。免税事業者が何の対応もせずにいると、免税事業者から仕入れる取引先企業は消費税を含む金額を支払ったにもかかわらず、消費税分を仕入税額控除できなくなる。

当面は猶予期間として、免税事業者との取引はインボイスがなくても、26年までは8割、29年までは5割を税額控除できるが、全額は控除できず自社でかぶることになる。

小規模店との取引が多い日本チェーンストア協会はこれに危機感を持ち「100%控除できる経過措置の設定や簡易課税制度の拡充を早急に検討してもらいたい」と要望する。

公正取引委員会は、インボイス制度導入に際して「取引先に一方的に不利な条件となる取引については、独占禁止法または下請法により問題となる可能性がある」とし、仕入れ先企業がインボイスを発行しないことを理由とした取引停止などの対応をとらないようけん制している。

発注側には消費税分の税額控除問題、受注側には将来的な取引停止のリスクと、双方にとって大きな課題が立ちはだかる。

日本商工会議所が実施した調査では、売上高1000万円以下の企業の約6割はインボイス制度導入について「特に何もしていない」と回答。一方で取引先企業の6割強が免税事業者に対して「インボイス発行事業者になるよう要請する」としており、双方の乖離(かいり)は大きい。

日商の担当者は「まずは制度の徹底的な簡素化が必要。年末の税制改正が固まるまでに政府や自民党税制調査会、全国515会議所と連携して地元国会議員などにも説明し、制度簡易化を求める活動を進める」としている。簡易化が進まなければ「導入延長も必要」とし、不退転の覚悟で取り組む考えだ。

インボイス導入には、税額の適正な把握と表示とともに、消費者が支払った消費税が納税されずに免税事業者の手元残る「益税」への対応もある。税率が今後さらに大きくなれば、益税は税の公平負担の観点からも見過ごせない問題となる。

一方で小規模企業や個人事業主にとっては、事務作業や納税で負担だけが増える制度であり、何らメリットが感じられないことへの不満も大きい。

年末の税制改正大綱の取りまとめに向け、議論が白熱するのは間違いなさそうだ。