シャープが堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市堺区)でパソコン向けなどの中小型液晶パネルの量産に乗り出す。今秋をめどにしてきたが、立ち上げに苦戦し、年明けにずれ込むもよう。デジタル機器の需要減退で液晶パネル価格が下落する中、シャープは3年以内にSDPを黒字化したい考えだが「それには投資をして中型の生産を増やす必要がある」(幹部)。経営悪化を招いて一度は連結対象から外したSDPだけに、市況変動のリスクを抱えながら、再び投資に踏み込めるか覚悟が問われる。

「円安のさらなる進行、エネルギー価格の上昇、インフレや景気の後退など非常に厳しい事業環境が継続する見通しにある」―。10月、シャープの呉柏勲社長兼CEOは下期(2022年10月―23年3月)の経営状況についてこう発信した。急激に進む円安で白物家電など輸入商材の採算が悪化。コロナ禍で盛り上がったテレビやパソコン、スマートフォンなどの需要は反動減で縮小。これらが業績に打撃を与える公算は大きい。

加えて重荷になりそうなのがSDPの存在だ。SDPはシャープが09年に稼働した液晶パネル工場の運営会社。巨額投資が裏目に出てシャープの経営悪化を招き、台湾・鴻海精密工業グループとの共同運営に切り替え、再子会社化まで連結対象から外していたが、シャープは6月にSDPを買い戻した。SDPは21年12月期に4期ぶりに当期損益が黒字化したが、今期の採算悪化は必至だ。そもそもSDPの中小型シフトはテレビ向けの不振が発端だ。

シャープはインターネット上の仮想空間であるメタバースや拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などの市場拡大に加え、米中摩擦でのサプライチェーン(供給網)の組み替えなどでSDPへの引き合いが強まると読む。方向性は正しいが、中国や韓国メーカーなどに対抗するには投資に踏み切ることが不可欠になりそうだ。

10月末、液晶パネルの中国最大手、京東方科技集団(BOE)は北京市に第6世代の新工場を建設すると発表した。VR製品の需要拡大に対応するもので、25年に量産を開始する予定だ。総投資額は290億元(約5900億円)。液晶パネル事業が落ち込み、22年7―9月期に最終赤字に転落する中、攻めの投資に打って出た。

シャープの7―9月期も厳しい決算になる可能性が高い。下期のテーマは「開源節流の徹底」(呉柏勲社長兼CEO)だという。新規事業を育てる一方、贅肉をそぎ落として経営体質を強靱(きょうじん)化する考えだ。だが液晶という装置産業を再び成長ドライバーに据えた以上、逆風下でも投資勝負は避けられない。難しい経営の舵取りを迫られる。