日立製作所の坪内繁貴主任研究員と岩崎富生主管研究員らは、特許や科学論文などのビッグデータ(大量データ)を駆使して生分解性プラスチックの性能を向上させる添加剤を見つけることに成功した。ポリ乳酸と添加剤の31万条件を高速探索して、生分解性と強度という相反する機能を両立させる。公開されているビッグデータを用いて有用材料を見いだし、材料研究者が強化原理を解明した事例になる。

公開済みの特許や論文、化学分子データベースなど1億件以上のデータを人工知能(AI)技術の自然言語処理で物性値などを整理し、新規化合物を生成し探索する。ポリ乳酸と31種の添加剤を探索対象に設定し、それぞれの類似物質100種を自動生成して組み合わせを高速評価した。元のデータにない条件も含めて100×3100通りの31万条件を数分で探索できる。

アジピン酸とジチオジプロピオン酸が有望と判明し、分子動力学計算と実材料試験で効果や原理を検証した。降伏強度は2剤とも無添加のポリ乳酸に比べて10メガパスカル(メガは100万)向上し36メガパスカルになった。分解性もアルカリ加速試験でポリ乳酸より速く分解した。

ポリ乳酸の分子中で極性を担うカルボニル基の配列周期と2剤のカルボニル基の距離は近い。2剤がポリ乳酸の結晶性を整えて強度が増し、同時に吸水性を向上させ分解性が高まった。一 般に強度と分解性は相反する。

公開データは実験条件がそろわずデータの品質が低いとされてきた。有効に活用する知見が整うと強力な研究基盤になる。システムは日立ハイテクソリューションズ(東京都港区)が外販する。技術の詳細は高分子学会が15日から開く「第31回ポリマー材料フォーラム」で発表する。