打ち上げに失敗した固体燃料ロケット「イプシロン」6号機をめぐり、同機に搭載した人工衛星や部品の再実証の行方が注目されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は大学や高等専門学校、企業にヒアリングを実施。日刊工業新聞社の調べでは多くの企業が再実証を望んでいる。ただ衛星を製作する資金や時間を捻出できるか不安視する声も聞かれ、JAXAには宇宙開発の促進につながる前向きな案が求められる。(飯田真美子)

「各機関に再実証の要望の有無を確認中。次の打ち上げ機会の提供を検討している」と永岡桂子文部科学相は話す。大学や企業などに宇宙での実証機会を提供する「革新的衛星技術実証プログラム」3回目に選定された機関が再実証の対象となる。

日刊工業新聞社は11月初旬、同プログラムに選ばれた7社3大学1高専1研究所の全12機関にアンケートを実施。「再実証の機会があれば再度イプシロンに製品を搭載したいか」との問いに対し、6機関が「再実証の機会があれば搭載したい」と回答した。2機関は「検討中」とし「再実証の機会は選択肢の一つとして検討する」とコメントがあった。

ただ次の打ち上げ時期が不透明な段階で判断するのは難しい。衛星などを利用した研究には世界と競合するテーマが多く、打ち上げ機会の見極めが重要だ。小型衛星の開発を進める東京工業大学の谷津陽一准教授は「実証で世界初の成果を狙う場合、1年遅れるとインパクトが薄れる」と強調する。

イプシロンの技術実証契約書には「損害などが生じてもJAXAは保証・責任を負わない」とある。小型衛星の製作には材料費に1機当たり約数百万円かかり、ここに人件費が追加される。再実証の機会が得られても、資金調達や製作時間で断念せざるを得ない場合もある。

海外での打ち上げ失敗時の対応は明記されていないが宇宙保険ビジネスが確立されており、年間打ち上がる積み荷の約半分が保険に入っているという。複数の小型衛星を地球周辺に配置して活用する「衛星コンステレーション」の構築などが加速する中で、宇宙輸送の需要は増加するとみられる。宇宙開発に詳しい笹川平和財団の角南篤理事長は「小型衛星を数多く打ち上げるための国産ロケットを持つことは重要」と話す。今回の打ち上げ失敗を受け、宇宙輸送に対する保証や保険が課題になりそうだ。

一方でIHIエアロスペース(東京都江東区)が打ち上げを受注したQPS研究所(福岡市中央区)の商業衛星2機については、JAXAから再実証に関する連絡はないという。QPS研究所は次機衛星の開発を進めており、米国から打ち上げる準備も整っている。

JAXAはイプシロン6号機に載せた衛星や部品の再実証の機会を検討中だが、2024年に実施予定の革新的衛星技術実証プログラム4回目への搭載も見込まれるという。再実証に向け、原因を早期に究明することが求められる。