欧米の金融引き締めなどで世界景気が失速する中でもなお、原燃料が高値に張り付いている。ロシア情勢の悪化に伴う急騰はピークアウトしたが、足元では供給不安が続く欧州の天然ガスがコロナ禍前の2019年末比で約9倍高く、電気自動車(EV)向けが好調な銅は約3割高い。市況の高止まりは燃料調達リスクの拡大を映し出す一方、脱炭素関連の需要増に伴う商機の広がりも示唆する。原燃料の相場が、争奪激化のシグナルを発している。(田中明夫)

対ロシア制裁の影響が直撃する欧州連合(EU)は、米国などから液化天然ガス(LNG)調達を増やし、11月1日期限のガス備蓄目標(貯蔵能力比80%)を達成したが、相場は依然高値にある。フランスで設備障害による原発の稼働停止が長引く中、9月にロシアとドイツを結ぶ大型パイプラン「ノルドストリーム」が破損。冬場のガス需給のタイト化が意識され、足元では北東アジアのLNGスポット価格も19年末比約5倍高い。

国際市場では長期の天然ガス調達の競争も激化している。米国では22年に入り、中国勢を中心に20年間程度の調達契約の締結が増加し、カタールでは10月に大型拡張事業2件で欧米資源大手の権益取得が発表された。

ただ日本企業の影は薄い。30年代には脱炭素化で天然ガス需要の停滞がありうる中、長期契約に大規模資金は投じにくいが、変動の激しいスポット調達への依存もリスクが大きい。「(長短の)バランスある契約を持つことが重要」(日本エネルギー経済研究所国際情勢分析第1グループマネージャー・研究理事の久谷一朗氏)であり、海外勢に対抗するには政府の資金サポートなども待たれる。

一方、工業品に幅広く使う銅の相場が高値を保つ背景には、EV向けなど脱炭素関連の需要増加がある。中国では1―9月のEV販売台数が前年同期比約2倍の358万台、欧州主要18カ国では1―6月が同約3割増の63万台と拡大した。

銅相場は足元で、3月につけた史上最高値比で約3割安い1トン=8000ドル近辺を推移するが、19年末比ではなお約3割高い。丸紅は「EVや再生可能エネルギーの設備に使う銅の需要が高まるのは間違いなく、相場の下支えになる」(柿木真澄社長)とし、22年度下半期の銅相場平均見通しを同8000ドルと置いた。

EV用電池に使うリチウムの相場も足元で19年末比約15倍と、脱炭素の商機を映して高騰し、南米では豊田通商や英豪リオ・ティントなどに中国勢が加わって開発競争が激しさを増す。三菱商事も銅の確保を進めるとともに、水素・アンモニア、再生エネ、リチウムなどの案件をリスト化し、「どう戦略化して投資するか検討している」(中西勝也社長)という。

ロシア情勢をめぐり混乱する市場でエネルギーを確保しつつ、脱炭素に向けて原料を調達する環境は、資源の乏しい日本にとって特に厳しく、争奪戦への出遅れはリスクを高めかねない。需給のタイト化で高値を保つ原燃料の市況は、日本の資源戦略に警鐘を鳴らしており、政府も含め調達のさらなる推進が急務だ。