LIXILの前身企業の1社、衛生陶器メーカーのINAXは伊奈製陶として1924年に設立した。約100年がたち、シャワーや温水洗浄便座など水回り製品の形は変化し、市場も新築からリフォームに移りつつある。LIXILで日本の水回り事業を担当する大西博之執行役専務に今後の方向性を聞いた。

―資材高の影響は。
 「業界は値上げを受け入れるが、消費者はそう簡単にはいかない。新設住宅着工戸数の減少速度が緩やかな下落から勢いを増すことが懸念される。今後、資材価格が落ちても単純に製品価格を下げて戻すだけでは利益率が下がるだけ。商品の価値を考え直し、値段を維持もしくは下げながら機能を洗練させる。例えば、トイレは節水のために複数の特殊なバルブを使い複雑な水の流し方をしている。バルブを一つにしてセンサーで流す物に応じた水量に調節すれば、資材を減らして機能を維持できる。資材価格が上がっている今こそ、技術革新が重要だ」

―新規事業に力を注いでいます。
 「100年近く続いてきたタイルやトイレのセラミックスや水を扱う技術は当社の柱事業だ。しかし次の100年を生き残るには新たな柱事業が必要だ。泡浴シャワーやミストシャワーは候補の一つ。日本の狭小住宅で、1日わずかな時間しか使用しない浴槽がそのままで良いのか。十分に暖まり、体を清潔にできれば浴槽はいらないのではないか。浴槽がなければ夜はシャワー、昼は在宅ワークのスペースにできるかもしれない。入浴の形だけでなく、住宅の機能まで変わる大きな変革を起こす製品を作るため新規事業を育てる」

―どのように新規事業を創出しますか。
 「現在20人程の新規事業部で企画開発しているが、会社全体が創造的な思考の集団になる必要がある。21年から水回り組織内で『ミライBOX』という公募を始め、2本が開発段階に進んだ。2回目の22年は約200本の企画が集まり、2、3本が最終選考に残った。普段は企画などに関わらない社員も参加するため、企画の立案や発表の仕方などの勉強になる。新規の製品開発に至らなくても、創造的な思考や技能、頭の切替につながる」

【記者の目/物珍しさから新たな定番へ】
 温水洗浄便座は、外出先で体験し、気に入った消費者が購入して浸透してきた。LIXILが特に力を入れる泡浴シャワー「KINUAMI」も、介護施設やスポーツジムで実機の体験が予定されている。物珍しさを払拭して新たな定番となるためには、よい商品づくりだけでなく、どのように消費者に訴えかけるかが注目される。(田中薫)