金融大手が自社社員による新規事業創出に力を入れている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は1月に傘下各社の社員が参加した新規事業創出プログラムを新設。妊婦用仕事服のサブスクリプション(定額制)サービスを大賞に選んだ。東京センチュリーはビジネスコンテストで選出した循環型複合養殖事業の実証実験を始めた。低金利の長期化で収益の多様化が求められる中、社員の挑戦意欲を生み出し、企業風土改革につなげる。(編集委員・水嶋真人)

「さまざまなネットワークを使って社内外のあらゆる方々とつながり、皆さんを成長させた」―。7日に都内で開いた最終審査会に参加した三菱UFJFGの亀沢宏規社長は、1月に始めた新規事業創出プログラム「スパークX」をこう評価した。

同プログラムにはグループ22社から約650件の応募があった。2次審査を経た最終審査には6チームが参加。社内外の有識者らの支援を受けてアイデアを磨き、亀沢社長ら審査員や社員の前で12分間のプレゼンテーションを行った。

グランプリは、仕事を続ける妊婦用仕事服に特化した宅配型の定額制サービスを提案した三菱UFJ銀行住吉支店の村田真実支店長代理らのグループが受賞。支店の空きスペースで若手画家らの作品を販売する特別賞の提案を含む計3件の事業化について今後、検討を進める。2023年度もスパークXを開催する意向だ。

東京センチュリーは20年9月に立ち上げた新規事業提案制度「TCビズチャレンジ」で応募40組の中から選出した循環型複合養殖事業「アクアポニックス」のプラントを神奈川県藤沢市に設置し、このほど実証実験を始めた。プラント面積は約100平方メートル。

チョウザメの稚魚約100匹、成魚約40匹が入った水槽で使った水を、フィルター内に繁殖するバクテリアを用いて硝酸塩に分解。この硝酸塩をタワー型の水耕栽培に使い農薬を使わないレタスなどの葉物野菜を月当たり約1800株育てる。

実証結果を踏まえ23年5月の経営会議で事業化を審議する。同事業を担当する今入優馬主任は「植物の残りかすを餌に養殖したコオロギを魚の餌にし、事業の持続可能性を高めたい」と意気込む。

三井住友ファイナンス&リースは19―21年度に実施したビジネスコンテストを23年度に刷新する。より良いビジネスプランを生み出すための社員教育、応募した社員のフォロー制度も整備する。

具体的には、12月にビジネスアイデアを考える社内ワークショップを開催。応募アイデアを事業化しやすくするため、社内外の専門家による支援体制を構築する。

19年度からのビジネスコンテストでは年間約300件の応募があるなど、社員のチャレンジ精神を促す当初の目標は達成したと判断。ビジネスアイデアの提案ではなく、より事業化に軸足を移したコンテストにする。

今後は人材教育や企業風土改革だけでなく、外部企業と連携しながら収益を生み出す事業に育てる段階で金融各社の手腕が問われそうだ。