乗用車メーカー7社の2022年4―9月期連結決算は全社が増収、トヨタ自動車以外の6社が営業増益となった。ただ為替の円安が上振れ要因となっており実力を反映した結果とは言いがたく、各社経営陣の表情はさえない。資材や物流のコスト増が直撃し、各社は車両販売価格の引き上げを検討するが簡単には踏み切れない。依然先行き不透明な状況下、難しいかじ取りを迫られている。

「環境はこの半年で急激かつ大きく変化した」。トヨタの近健太副社長はドル円相場や米国債10年物の利回りの推移を例に挙げ、実感を込めて話す。同社は5月時点で1ドル=115円としていた23年3月期の想定為替レートを8月に130円、今月1日には135円に変更したと公表した。

輸出産業である自動車業界にとって円安は業績の押し上げ効果になる。一方で海外からの原材料調達にはマイナスに働く。日産自動車の内田誠社長は「32年ぶりの歴史的な円安水準で決算は増益になるが、中長期で見れば材料コストやオペレーションの面で課題が出る」と懸念。トヨタの近副社長も「将来にも大きな影響を与えかねない変化がいくつも同時に起きている。自動車産業の半年先も見通しづらく、トヨタの収益や台数を見通すことも本当に難しい」と吐露する。

ウクライナ情勢などの影響で、原材料は高騰している。世界銀行によると、20年に平均1トン当たり1794ドルだったアルミニウム価格は、22年1―3月には同3250ドルに上昇。10月は同2256ドルとなりピークは脱したものの、円安も響き依然として重荷だ。

ただ特に国内での価格転嫁については各社とも慎重な姿勢を崩さない。スズキの鈴木俊宏社長は「原材料高騰と為替の問題があり、値上げしたい気持ちはあるが(購買層の)懐具合を考えると簡単ではない。どのような仕様で値付けするか知恵を絞る」と苦しい胸の内を明かす。ホンダの竹内弘平副社長も「特に軽自動車では競合他社がいる中、我々だけが原材料高をダイレクトに反映するのは難しい」と語る。

コスト高に対応し、各社はサプライヤー支援を強化している。日産の内田社長は「原材料に加え、本年度から電力や物流費についても適切な対応を取っている」と説明。トヨタは資材高騰が23年3月期の営業利益を前期比1兆6500億円押し下げると見込んでおり、この中にはサプライヤーの負担を肩代わりする費用が含まれる。支援の根底にあるのは「車は3万点の部品から成り立っており、トヨタだけで競争力を高めることはできない」(近トヨタ副社長)との思いだが、費用負担は業績にのしかかる。