送電ロスが少なく、長距離送電が可能などの利点を持つ高温超電導直流送電(SCDC)技術の実用化研究が新展開を迎えた。中部大学を主体とする石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(石狩技組)は、6年ぶりに北海道石狩市にある高温超電導施設の再稼働に成功。試験研究の加速とビジネスモデルの検討を進める。再生可能エネルギー由来の電力の送電手段として有効とし、脱炭素社会実現に貢献を目指す。(名古屋・鈴木俊彦)

SCDCは液体窒素で冷却した高温超電導ケーブルを用いて直流電流を送電。電気抵抗ゼロの超電導現象の特性を生かし長距離送電での送電ロスが少なく、二酸化炭素(CO2)排出の大幅削減が期待される。

中部大は2006年に春日井キャンパスに世界初の超電導ケーブル長20メートルSCDC実験装置、10年に同200メートルの同装置を建設。冷却試験などで得た知見を基に取り組んだのが石狩高温超電導施設での実証試験だ。

石狩技組は中部大のほか、JFEスチール、さくらインターネット、日揮グローバルが参加。同500メートルの回線1、同1キロメートルの回線2のSCDC回線二つを建設し、13年から4年間、実証研究を実施。太陽光発電とインターネットデータセンターの間の給電に成功したほか、送電ロスを従来の10分の1以下とし、ギガワット級の電力を低電圧で長距離送電できるなど技術的見通しを確認できた。

実証研究を主導している石狩技組理事長の本島修中部大理事・学事顧問は「技術は確立した。スマート社会に向けたビジネスモデル構築に着手する準備ができた」と自信を深めている。

実証研究に貢献を果たした要素技術の一つが内部への熱侵入を抑えた断熱管だ。超電導状態である以上、外からの熱侵入が送電損失のカギを握る。

輻射熱を遮るシールドで覆うなど構造を改善し、熱損失を大幅に抑制。「超電導状態を保つための冷却ステーションを距離20キロメートルの間隔で置けば十分。将来は100キロメートルに伸ばすことも可能」(筑本知子教授)とし、従来の送電設備に比べてコスト的に優位という。

実証研究終了後、約6年間の休止期間を経て、同施設は21年9月に機器の健全性確認と低コスト合理化運転の実証を目指して再稼働した。この間に北海道胆振東部地震に見舞われたが、機器の機能など劣化が見られず「SCDCシステムの健全性を確認できたことは、適切なメンテナンスにより数十年にわたる運転が可能なことを実証できたことになる」(井上徳之教授・石狩技組専務理事)と社会実装の道筋がついた。

今後は大規模再生可能エネルギー発電装置間の接続実験、各種安全性試験などを計画。「社会実装は長いスケールで考えるべきだ。送電線の更新時にSCDCに切り替えていく方法が現実的」(本島理事)と指摘する。

将来的には世界標準につながる安全基準の構築を目指す。「国際規格を日本が主導し、国際競争力の向上に寄与していきたい」(同)とSCDC研究で世界をリードしていく。