豊田合成は射出成形用金型メーカーに対して3次元設計データの提供に乗り出した。車の先進機能がフロントグリル内部に搭載され始め、グリルの厚みや表面粗さに一段の高精度が求められる。金型メーカーとの連携を深め、グローバルで高い生産性を確保しながら品質の均一化を実現する狙いだ。一方、金型メーカーは試作が減り、加工技術を磨くことに専念できる。サプライチェーン(供給網)全体の競争力強化にも結びつく見通しだ。

豊田合成はエンジンやラジエーターに空気を取り込み冷却するフロントグリルを射出成形で製造する。電気自動車(EV)ではミリ波レーダーやLiDAR(ライダー)、光学レンズなど自動運転を実現する機能がグリルに集約され、大型化や形状の複雑化などが進む。センシング機能を成り立たせる高度な肉厚精度や高い表面粗さが必要になる。

 

豊田合成は約10年前からコンピューター利用解析(CAE)技術の利用を広げ、金型の外郭や厚みの最小化を進めてきた。足元では最大3―4割の質量削減を実現する。成形品に加え、金型や射出成形機の流体・剛性・構造解析も行っており、2021年度には独自の「離型解析」も導入。押し出しピンの最適配置により成形品への離型抵抗を軽減する。

 

流す・固める・取り出すという射出成形で不可欠なしきい値が解析により明確化したことで、3次元データの提供が実現した。

 

従来は例えば五つの仕様があった場合、別々のメーカーに発注していた。設計変更が生じた場合、それぞれの金型を検査し、作り直す手間がかかり、コストが数倍になるケースがあった。共通項を見いだすことで、一つのメーカーに集約することも可能になる。設計変更が必要な場合でも豊田合成がCEAによる改善案を提供する。

 

今後は成形品や金型、射出成形機の解析データを人工知能(AI)に学習させ、自動車メーカーから新しいフロントグリルのデザインを受け取るとすぐに金型を自動設計できる体制を目指す。電動車の普及で金型の開発スピードの重要性も高まる中、中小メーカーが多い金型業界の競争力底上げにもつなげる。