経営者として必要不可欠な資質は「社員の能力をいかに発揮させ、活躍を最大化することができるか」だと、カルビーの伊藤秀二社長は考えている。この考えに至る、経営者としての基礎は30代で経験した大阪支店の主任時代にある。肩書きは主任だったが、16人の部下を抱え、当時参入したばかりのシリアルの営業を任された。16人の部下のうち14人は新卒や中途の入社間もない社員ばかり。

当時、人事の担当役員だった川瀬博之元会長から、「管理職だからと言って、人として上になったわけではない。責任を負うだけなので、勘違いをしないように」とクギを刺された。ここから導き出したのが「認めて、任せる」というやり方。16人の部下を2人1組のチームにして、エリアごとに配置。現場に営業と育成を任せた。その上で、営業先の店舗ごとに時系列で進捗(しんちょく)を整理したカルテを作り、全体を把握、管理した。このカルテは役職に関係なく全員見ることができるため、進捗を共有し、営業を見える化できた。

この業務フローはその後、社内全体に横展開され、現在もカルビーの営業部門の基盤になっている。「部下だった16人の中から、後に3人が支店長になった」ことが、自らのマネジメントが正しかったことの証左だ。

その後、総合企画室に配属となり、管理会計の導入や、委員会制度の創設、中期経営計画の策定など組織の基盤作りに携わりながら、社内で創設した「カルビービジネススクール」でマネジメントコースを受講した。経営学部を卒業していたものの、社会人経験を踏まえ、マーケティングや経営管理を学び直したことは経営者としての糧になった。

自らが築いた組織体制や学び直したマネジメントを執行役員として実践しながら、ポテトチップスの主原料であるばれいしょの安定調達の重要さを痛感した。2009年に社長になると、それまで対立することが多かったホクレンとの関係の見直しに本格的に着手。ホクレンとのやり取りを「相手を変えようとするのではなく、自分を変える。自分のスタンスを変えたときに何ができるかを誠意を持って伝えた」と振り返る。思いが通じ、20年に業務提携を締結した。

国産ばれいしょの安定調達のため、北海道を中心に注力してきた農業振興の取り組みは、現在、日本が直面する食料安全保障の解決にもつながる。ジャガイモで作り上げた仕組みを、大豆やトウモロコシなど他の作物に広げることで、日本の社会課題解決に貢献することを目指す。(高屋優理)

【略歴】いとう・しゅうじ 79年(昭54)法政大経営卒、同年カルビー入社。01年執行役員、05年常務、09年社長。福島県出身、65歳。