国際宇宙ステーション(ISS)搭載ライダー実証(MOLI)は、日本初の宇宙からレーザーにより地表面形状、および森林を立体的に観測するミッションである。まずは実証ミッションとして、ISSの「きぼう」日本実験棟船外実験プラットフォームに搭載し、ISS軌道直下のエリアを対象に観測技術の獲得を目指している。

森林の立体的な情報は、気候変動の予測に必要な二酸化炭素の流れや、そこに住む生物の多様性を推測することができるなど、地球環境の理解や気候変動の状況を把握する重要なパラメーターの一つである。MOLIで得られた技術をベースに、将来的には地球周回軌道の人工衛星に搭載して全球を観測することで、地球規模の環境問題へ貢献できる。

また、MOLIで用いるライダー技術は、通常の光学センサーでは観測できない地形情報を取得できるため、特に人が立ち入ることが困難な山間部や離島などに対して、インフラ整備・防災のための地盤情報の取得・分析や、豪雨や地震災害などに伴う地形変化などの状況把握に役立つことが期待されている。

ライダーは、測定ターゲットにレーザー光を照射してターゲットまでの距離を測定する技術である。MOLIでは、1秒間に150発のパルスレーザー光を地上へ向けて照射し、レーザー光が地上の対象物に当たった際の反射・散乱光が、再びMOLIへ戻ってくるまでの時間を計測して対象物までの距離を測定する。

さらに戻ってきた反射・散乱光を時間ごとに波形として記録するため、単に対象物までの測距だけではなく、その波形から対象物の切り分け(樹木か地面か)や、森林の立体的構造の把握が可能となる。もちろん、地上へ到達するレーザー光強度は微弱であり人体・機器などへの影響はない。

昨今ニュースでしばしば取り上げられる各地の異常気象や気候変動は、地球規模での水循環、生態系・生物多様性、農業生産などに直接的な影響を与える。また、大型台風や局地的豪雨などの極端現象の発生頻度も上がり、日本においても防災・減災に対して国土強靱(きょうじん)化を目的とした都市計画・インフラ整備などの対策も長年進められている。MOLIから始まる「宇宙からのライダー観測技術」により、これら地球規模での問題・課題の解決に大いに貢献できるものと考えている。

研究開発部門 MOLIプリプロジェクトチーム チーム長 住田泰史

熊本県出身。2005年入社。太陽電池パドル・電源系の研究開発、衛星プロジェクト・実証ミッションに従事し、21年10月のチーム発足とともに現所属。趣味は料理と街ぶら。博士(工学)。