「自分たちが造っている品物と社会との関わりを知ってほしい」―。東伸(愛知県大口町、祖父江正直社長)が2020年に国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを始めた理由だ。同社が手がける黄銅の鍛造品の受注は、住宅設備用配管部品や電気自動車(EV)用部品向けで堅調に伸びている。「人の暮らしや移動を支える重要な製品であることを再認識してもらう」(祖父江社長)ために選択したのがSDGs宣言だった。

宣言直前、まだ社内ではSDGsという言葉は浸透していなかった。だが、祖父江社長には環境に配慮した取り組みが社業にも好影響を与える体験があった。00年代初頭、同業他社の中でも比較的早く取得した環境に関する国際規格「ISO14001」が評価されて自動車関連企業との取引が始まり、今ではEVの部品を納めている。環境に配慮してこそ顧客に選ばれる。社内でもSDGsの考え方の理解が進む。

従業員の半数は女性。検査業務をしている品質管理のリーダー

製品や環境のみを軸にしてSDGs宣言を行ったわけではない。同時に重視したのは女性が働きやすい職場づくりだ。「特にこれまでは意識してこなかった」(同)が、従業員32人中16人が女性で男女は半々の比率になっている。社内の役職である「リーダー」も5部門のうち、品質管理と総務で女性が就任している。すでに女性の存在があって初めて成り立つ会社になっていたのだ。

製造現場でも多くの女性が活躍する。工場の制約上どうしても省力化できず男性が担当する段取り作業はあるが、「皆で協力すればいい」(同)。活躍する女性社員を見れば後輩の励みにもなる。

今後のテーマは次世代のリーダーの育成だ。SDGsの理念を社内に浸透させることが、次世代のリーダー育成にもつながる。東伸は伸銅の問屋業に始まり、加工業へ業態を変えてきた。これからも変化に対応する人材が、会社の「持続可能性」を支えていく。