海外自動車メーカーが電気自動車(EV)の主力モデルを日本市場に相次ぎ投入している。独自技術による航続距離の延伸や低コスト化を武器に市場を開拓する。同時に充電網を充実することでEV購入のハードルを払拭する。車両の高度化とインフラ整備の両面でEV普及の好循環を生み出し、販売促進につなげる狙い。EVの本格普及を控える“未開の市場”をめぐる競争は激しさを増しそうだ。(増田晴香)

フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、愛知県豊橋市)は11月末にEVブランド「ID.シリーズ」初の日本向けとして、スポーツ多目的車(SUV)タイプの「ID.4」を発売した。小型・大容量バッテリー搭載で長い航続距離や広い室内空間を実現。欧州や北米、中国で約12万台を販売している世界戦略モデルで、日本市場のEV展開に本腰を入れる。

フォルクスワーゲン(VW)傘下のアウディブランドも、10月に第3弾のEVとなる小型SUV「Q4 e―tron」を投入した。ID.シリーズと同様、VWグループの共通車台を取り入れることなどで価格を抑え、EV拡販の切り札に位置付ける。すでに2000台以上の受注を獲得しているという。

2023年1月には中国EV大手の比亜迪(BYD)が中型SUV「ATTO3」を発売する。同車は自社開発のリン酸鉄リチウムイオン電池「ブレードバッテリー」を搭載し安全性や耐久性を強みとする。“手の届きやすい価格帯”を表明しており、近く公表する価格が日本市場での競争力を左右しそうだ。

海外メーカー各社は車両性能のアピールと並行し、充電網やサービス体制の増強を販売戦略に掲げる。VGJのマティアス・シェーパース社長は「充電時間短縮のため急速充電器の整備が欠かせない」とし、系列販売拠点などでの整備を加速している。VW系列ではID.4を販売する158店舗に、24時間利用できる出力90キロワット以上の急速充電器を23年頭までに設置する。

また、アウディとポルシェのユーザーが急速充電器を相互利用できる「プレミアムチャージングアライアンス」にVWブランドも追加。22年末までに3ブランド合わせて全国220基の充電網を構築する。充電インフラやサービス体制について「ユーザーの利便性を考えながら今後も模索していく」(シェーパース社長)考えだ。

BYDの劉学亮社長は「充電設備の不足がEV購入のハードル」と独自で実施したアンケートの結果を分析。同社は25年までに47都道府県に100店舗超のディーラー展開を目指す。店舗では購入の検討からアフターサービス、充電まで対応する体制を整える。

このほか「プジョー」ブランドなどでEVを展開するステランティスジャパン(東京都港区)は、ENEOSの急速充電サービス「エネオスチャージプラス」を22年度内に正規ディーラー59店舗で提供開始する。インフラ面の不安解消や利便性の向上に先回りで取り組み、ユーザー獲得につなげる。

 国内完成車メーカーもEVの投入を本格化する中、海外メーカーはエンジン車で蓄積してきたブランド力や価格力、インフラなど利便性の向上で太刀打ちする。
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