大手商社7社が9日までに発表した2023年3月期連結決算(国際会計基準)は、三菱商事と三井物産が総合商社として初めて当期利益が1兆円を超えた。エネルギーや金属といった資源市況の高騰が追い風となったことに加え、事業ネットワークを生かした収益基盤の強化が奏功した。一方、24年3月期は市況のピークアウトを受けて全社が減益を予想。脱炭素やデジタル化など経済環境の変化に対応し、業績の下方硬直性を示せるかが焦点となる。

三菱商事の23年3月期当期利益は前期比25・9%増の1兆1806億円となった。天然ガスの高騰に加え、東南アジアで好調の自動車事業などコロナ禍からの需要回復を取り込み、10部門中7部門で過去最高益を更新。中西勝也社長は「資源以外でも追い風をきちっと捉える力があることを1年通して実感した」と総括する。

三井物産の当期利益も同23・6%増の1兆1306億円と1兆円台に乗った。市況上昇に加え、再生可能エネルギーの推進やヘルスケア部門の強化など「事業ポートフォリオの変革の成果」(堀健一社長)が貢献した。市況高騰はほかの商社の業績にもプラスに寄与し、23年3月期は7社中6社が当期利益で過去最高を更新した。

一方、24年3月期は市況のピークアウトを受けて全社が当期減益を予想する。米国の金融引き締めに伴う景気減速のほか、新型コロナウイルス感染対策を緩和した中国では「化学品(の需要)がまだ上がってきていない」(双日の藤本昌義社長)など、主要国経済が勢いを欠くことも業績の重荷となる。

三菱商事の中西社長は、当期利益を再度1兆円レベルにもっていくには「成長が鈍化している事業などを整理整頓して循環型の成長モデルにつなげていく」ことが必要とみる。伊藤忠商事はエネルギー転換やデジタル化などに対応しながら「市況変動に対して耐性を持たせる」(石井敬太社長)。各社の収益基盤のさらなる強化が試される。