日本原子力研究開発機構の酒井宏典研究主幹と徳永陽グループリーダーらは東北大学と共同で、量子コンピューター材料などとして期待される「トポロジカル超伝導体」の候補物質であるウラン化合物において、新たな超電導状態を発見した。高磁場超電導と低磁場超電導の間に両者が入り交じった混合超電導状態があり、この状態ではかける磁場により特性が変化していく。多彩な超電導状態の制御により、次世代量子コンピューター用の新しい超電導量子デバイス開発が期待される。

研究グループは、ウランテルル化物(UTe2)において超電導性能が格段に向上する超純良単結晶の育成方法を開発。これにより超電導転移温度を1・6ケルビンから2・1ケルビンに高め、精密実験を実現した。

東北大が開発した、世界最高磁場の25テスラを発生可能な無冷媒超電導磁石を用い、磁場や温度を変えながらUTe2の電気的・磁気的応答を同時測定し、超電導の性質を詳細に調べた。

その結果、磁場をかけていくと、低磁場超電導内にもうひとつ境界があり、15テスラ周辺で高磁場超電導に移り変わる前に今まで知られていない混合超電導状態が現れることが分かった。混合超伝導体では、電流によって超伝導体を貫く磁場を動かしやすい。

この結果はUTe2が「スピン三重項トポロジカル超伝導体」であることの裏付けとなる。同超電導体は、通常の超電導体と異なり多様な電子ペア形成が起こりうるため、新たな機能が見込まれる。