乗用車メーカー各社は2024年3月期の生産・販売台数が前期を上回る計画だ。前期に比べて新型コロナウイルス感染拡大による生産への影響が減るほか、半導体などの部品不足に対しても、各社の調達や生産の対応力が向上してきた。生産・販売の“量”の回復に、価格改定などの販売の“質”の向上を加え、成長路線への回帰を確かなものにしたい考えだ。ただ、行く手には原材料費などのコスト増という難所も立ちはだかっている。

乗用車7社の24年3月期 4輪車生産・販売台数

生産台数が増える背景について、トヨタ自動車の宮崎洋一副社長は「半導体の先々の供給リスクを見える化しながら、代替品の検討などに取り組み、工場の稼働率向上に向けた改善を進めた結果、3月以降、高い水準の生産が継続できている」と説明する。日産自動車も「半導体供給不足の問題は解消されず継続しているものの、状況は確実に改善しており、中国も『ゼロコロナ政策』の転換により経済活動は正常化している」(内田誠社長)とし、生産・販売台数の回復を見込む。

生産・販売台数という“量”の回復と同時に各社が取り組むのが、価格改定などによる販売の“質”の向上だ。ホンダはインフレ影響による製造コスト増や為替円高のマイナス影響があるものの、4輪車の生産・販売台数増に加え、価格改定や事業体質の強化により、24年3月期連結業績予想の営業利益は過去最高の1兆円を計画する。マツダは過去5年間で車種・グレード構成の改善や販売価格の改定などに取り組んだ結果、1台当たりの売上高が向上。販売台数が減る一方で売上高を増やしてきた。24年3月期はこうした販売の質の向上を継続しながら、販売台数増に取り組む。

各社の販売の質の向上では、車の供給が少なかったことから販売奨励金を抑制できた側面もあった。ただ、生産が回復するのに伴って今後は奨励金が増えると予想される。三菱自動車は北米などで販売奨励金を抑え、23年3月期は過去最高の営業利益更新につながった。24年3月期は自動車の供給が回復すれば「(奨励金を)積み増す必要がある」(加藤隆雄社長)と見ており、車の商品価値の訴求を重視し、安易な積み増しを抑える考えだ。

一方、各社の利益面では原材料価格やエネルギー費、物流費、労務費などの上昇が重くのしかかる。24年3月期は部品メーカーからもコスト転嫁を求める動きが一層活発になると見られ、成長路線への回帰に向けた難所となっている。乗用車メーカー各社は、生産・販売の量と質の向上で稼ぐ力を強化しつつ、原価低減活動などを合わせて、コスト増に立ち向かう構えだ。


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