福島市の職員が開発した内製ソフトウエアを、ぎょうせいとエフコム(福島県郡山市)が商品化したところ全国200近い自治体から引き合いが相次いでいる。庁内の部局を超えて情報共有しつつ、議会での答弁検討の事務負担を大幅に軽減できる。価格も安く、販売元では「想定を超える反響」(エフコム)とし、地元・福島県はじめ他の都道府県からも問い合わせが寄せられているという。(福島・藤元正)

このソフトは4月発売の議会答弁検討システム「答べんりんく」。元々は福島市政策調整部情報政策監の信太秀昭氏がデータベース管理ソフト「アクセス」上で開発し、同市が運用していた。それにぎょうせいが関心を示し、エフコムが改良を加えた商品版を開発。ユーザーはぎょうせいのクラウドサービス経由で利用できる。

オリジナル版の開発のきっかけは信太氏が総務部次長時代の2018年。職員が議会の質問取りや紙の答弁書作成に忙殺される姿を見て「職員の仕事を楽にできれば」と思い立ち、趣味のプログラミングの腕前を生かし、部局を超えて情報共有できるソフトを作った。

まず総務課と消防本部に導入し、同年の9月議会で一部利用を開始。利用者の声を反映しながら細かい改良を加え、次の12月議会から本格運用が始まった。実は仕事のやり方が変わることに抵抗を示す職員もいる中、トップダウンで後押ししたのが17年に就任した総務省出身の木幡浩市長。「事務の効率化とデジタル化」を掲げた市長の鶴の一声で一気に活用が進み、同市初の「自治体ビジネス」にもつながった。開発協力ということでシステム利用料の一部は福島市に還元する。

利用段階で信太氏が「予想外の成果」と驚いたのが、各部局が答弁案を入力しながらその内容をリアルタイムに共有し、部局間で調整を始めたこと。検討会もパソコン画面を見ながらのため紙の答弁書が不要。ギリギリまで部局内での検討に時間が使える。ペーパーレスでもあり、年間5万5000枚もの用紙節約を実現できた。

販売はエフコムが福島・宮城県内、それ以外をぎょうせいが担当。利用料金は、例えば人口10万人未満の自治体で1団体当たり月3万円(消費税抜き)から。かなりの低価格と言えるが「便利なものを作ったので、ぜひ自治体全体のDX(デジタル変革)に貢献したい」(木幡市長)との思いが反映された。