総合商社が廃食油や植物性油などから作るバイオディーゼル燃料(BDF)の活用に向けた取り組みを強化する。伊藤忠商事はトラックなどに使うBDFの輸入を2023年度下期から拡大する。三井物産は内燃機関の不具合要因となる純度100%のBDFを利用可能にする装置の国内販売を23年後半にも始める。電気自動車(EV)の普及には時間を要する見通しの中で、既存の内燃機関を活用して低炭素化を促進する。

伊藤忠商事はフィンランドのBDFメーカーのネステとの間で、国内流通の拡大に向けて商標ライセンス契約を締結した。23年度下期にはコンテナ船での輸入をタンカーに切り替えるほか、積み出し港をオランダからシンガポールに変更して輸送距離を短縮する。30年には年間10万キロリットルのBDF販売を目指す。

三井物産は、純度100%のBDFを内燃機関車に利用できる装置を開発する米オプティマステクノロジーズに600万ドル(約8億3400万円)出資した。エンジン停止後の低温環境下で流動性を失うBDFは、軽油を80%以上混ぜて使うのが一般的だが、トラックに後付けする同装置は内燃機関から不純物を除去する。25年末までに国内で200台のトラックへの採用を目指す。

双日もこのほど、BDFなどの生産を目指す米ネクストリニューアブルフューエルに出資。26年の商業運転の開始を予定している。

脱炭素へ向けてはEVの普及が見込まれるが、充電インフラの整備や電力が化石燃料発電由来であることなどが課題となっている。EVの普及までは「低炭素に寄与する燃料も必要」(伊藤忠商事)となっており、既存の内燃機関を生かした取り組みが活発化している。

また、国内では廃食油が回収されても用途が限られ、海外に輸出されているケースが多い。装置などインフラを整備して「再生燃料として国内で使えるようにする」(三井物産建機・輸送車両ソリューション事業部の伊田照義室長補佐)動きも加速する。