自動車部品メーカーの間で、データを基に問題点を見える化し改善する「データドリブン経営」の取り組みが進んでいる。日進工業(愛知県碧南市、長田和徳社長)や旭鉄工(同、木村哲也社長)は、ITやデータを生かし、生産性向上のほか二酸化炭素(CO2)排出量や電力消費量などの削減を加速する。特に高止まりする電力料金は利益を押し下げる要因となり、対策は喫緊の課題。加工の工夫のみならずソフトウエアを駆使し、事業基盤を下支えする。(名古屋・川口拓洋)

2023年の電力料金は21年比2倍程度で推移しており、経営に与えるインパクトは少なくない。

エンジンやハンドル向け樹脂成形品などを手がける日進工業は武豊工場(愛知県武豊町)で、配電盤に設置するだけでデータ収集が可能な「デジタルデマンド装置」を用いて、時間やラインごとの電力量などを把握している。同装置は関連会社のサンアドバンス(愛知県碧南市)が開発。クラウド上に作成した工場の模式図と組み合わせ、該当箇所をパソコン画面でクリックすることで詳細なデータを得られる。

データから「休日でも電力の低減は限定的なことが分かり、コンプレッサーを大型製品から小型製品に置き換えた」(長田社長)。このほか照明の設置数の最適化や、エア漏れの是正など地道な活動を進める。生産面でも機械の停止時間を把握し、原因を追求。ラインによって60%程度だった稼働率を98%以上にまで引き上げた。

自動車のエンジンや変速機向けの熱間鍛造製品を手がける旭鉄工は、電力購入量について23年9月期までに13年比3割削減を目指している。4月末時点で同26%減に成功。改善のノウハウを組み入れた独自のIoT(モノのインターネット)モニタリングシステムを応用し、計測器を使用しなくても電力消費量を稼働データから算出する。

旭鉄工ではこまめな電源オフを従業員に意識付けている

同社は加工に必要な電力を「正味」とし、休憩中などの「待機」と設備トラブルの「停止」を分けた。正味を伸ばすため、設備の電源をこまめに切るなど待機を徹底して削減。国内だけでなく、22年12月からタイ工場(ラヨーン県)でも電力消費削減の取り組みを実施し、23年3月までに42%低減した。木村社長は「設備の電源を切るだけ」と話す。

日進工業と旭鉄工の両社に共通するのは、ITを手がける関連会社を持つ点。今後、日進工業はサンアドバンスと連携し、人工知能(AI)活用による設備の稼働や電力使用の“予測”に乗り出す。旭鉄工はアイスマートテクノロジーズ(愛知県碧南市)と大手企業を中心に他社展開を加速する。木村社長は「ガス料金の見える化も進める」と意気込む。


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