水素と二酸化炭素(CO2)から合成メタン「eメタン」を製造する技術「メタネーション」の実証で、東京ガスが取り組みを加速している。2022年3月に横浜市鶴見区の研究開発拠点で小規模装置を用いた実証を開始。23年から水電解装置(水素製造装置)や太陽光発電装置を導入し、再生可能エネルギーによるグリーン水素の製造を始めたほか、横浜市の清掃工場から回収したCO2の活用もスタートさせた。(根本英幸)

eメタンは燃焼時に出るCO2と、製造時に回収されたCO2が相殺され、大気中のCO2は増えない。既存の都市ガスインフラをそのまま使える強みがあり、特に電化が困難とされる200度C以上の産業用高温熱需要の脱炭素化に貢献すると期待されている。

普及のネックは、原料である水素の製造コストだ。現状は1ノルマル立方メートル当たり100円で、天然ガスの同15円以下に比べて非常に高い。経済産業省は6月に改定した「水素基本戦略」で、30年に同30円、50年に同20円まで下げる目標を掲げた。東ガスも燃料電池開発で培った技術を転用したPEM(固体高分子膜)水電解方式で挑戦する。

自社開発の水素製造装置

成果の一つが、SCREENホールディングスと共同開発した触媒層付き電解質膜だ。水電解装置の性能、コスト、耐久性を左右する重要部品であり、SCREENの「ロールtoロール方式」を使い、面積が800平方センチメートルの大型電極の連続生産技術を確立した。

今後はサイズ拡大に向けた技術開発を進め、5000平方センチメートルの量産設備を構築、25年度の量産を目指す。並行して希少金属であるイリジウム使用の少量化も実現した。

さらに米H2Uテクノロジーズ(カリフォルニア州)と連携し、イリジウムを使わない新触媒材料の探索に着手した。従来は3、4日かかるサンプル1個の合成・評価を、インクジェット技術を用いて10分に短縮。人工知能(AI)を使い、高性能な非イリジウム触媒材料を開発する。

東京ガス水素・カーボンマネジメント技術戦略部水素製造技術開発グループの中島達哉セル技術開発チームリーダーは「世界の動向を把握しながら国際競争に勝てる技術を獲得する」と抱負を語る。

一方、22年春に導入したメタネーション装置(日立造船製)の製造能力は毎時12・5立方メートル。当初は系統電力を使う化石燃料由来の水素を使っていたが、太陽光発電設備を新設し、その一部をグリーン水素に換えた。CO2も7月から、近隣の横浜市清掃工場の排ガスから回収装置(三菱重工業製)で分離回収し、トレーラーで受け入れている。

今後は横浜市の下水処理場の消化ガス(下水汚泥処理時に発生するバイオガス)をCO2の原料に、再生水(下水処理水を濾過した水)を水素の原料として受け入れる計画だ。同技術戦略部革新的メタネーション技術開発グループの篠澤康彦鶴見実証チームリーダーは「都市ガスに1%以上注入する30年に向けて開発を加速したい」と強調した。