新技術で気候変動対策に取り組む企業「気候テック」が存在感を放っている。“電力取引所”を運営するデジタルグリッド(東京都港区)は2017年の設立から6年間で60社から42億円を調達した。事業活動による温室効果ガス排出量算定サービスを提供するゼロボード(東京都港区)は、21年の創業時から従業員数が25倍の170人以上に増えた。政府も成長を後押ししており、気候テックが脱炭素ビジネスの起爆剤として期待される。(編集委員・松木喬)

デジタルグリッド、60社から42億円調達 「電気を選べる基盤」利用拡大

デジタルグリッドは17年、フジクラや立山科学工業(富山市)など5社が出資で起業した。その後、東京ガスや京セラ、三菱商事、清水建設、ソニーグループ、日立製作所なども次々と出資した。豊田祐介社長は「潤沢な資金があり、ありがたい」と感謝を口にする。

同社はAI(人工知能)を使い、企業が発電所を選んで電気を購入できるプラットフォーム(基盤)を運営する。阿部力也氏(元東京大学特任教授)が開発した技術がベースだ。「メールのように電気を送る」がコンセプトの一つで、太陽光パネルの電力を送りたい先に送電したり、安い電力を探して買ったりできる。「電気に色を付ける」もコンセプトで、「再生可能エネルギー」や「石炭火力」といった電気の種類が分かる。

今は政府の制度変更によって、電力の種類や発電所を選んで購入できるようになった。デジタルグリッドは創業時、「日本を代表する基盤をつくろう」と呼びかけ、企業から出資を募った。ベンチャーキャピタルからも資金調達できたが、「事業会社は電力を購入するので、基盤のユーザーにもなる」と見込んでいた。実際「少額出資でも各社は経営会議に諮るため、役員にもデジタルグリッドを認識してもらえた。出資後、経営陣が担当部署に対し、デジタルグリッドとのシナジーを求めるようになった」と効果を振り返る。

潤沢な資金があり、ありがたい…と豊田社長

飛躍の契機となったのが22年の燃料価格高騰だ。基盤は新電力の販売停止によって電力の契約先がなくなった企業の受け皿となって利用が拡大。新規の企業ほど電力価格の抑制を期待していたが、次第に「電気を選べる」機能に関心が移り、再生エネの取引が増えた。想定の倍のペースで採用企業が増え、現在は2000拠点が基盤を使って電力を売買する。中堅・中小企業の利用も多い。

再生エネを使った価値を持つ非化石証書を安定調達できる「バーチャルPPA(電力販売契約)」の仲介も始めた。同社は価格変動を吸収する仕組みを編み出しており、企業は長期間、安定した価格で再生エネを購入できる。発電事業者も長期間の売電が約束されるので、太陽光発電所や風力発電所への投資を継続できる。二酸化炭素(CO2)ゼロの電力を求める企業のニーズに応え、再生エネの普及に貢献できる。

60社から調達した資金は、新規参入を目指す蓄電池事業への投資に充てる予定だ。また、人員も現在の50人から増員する計画。上場の準備も始めており、再生エネの取引基盤として成長が加速されそうだ。

ゼロボード、温室ガス排出量開示 算定サービス採用増

ゼロボードは21年、7人で起業し、創業2周年の23年8月には従業員178人に増えた。22年から一部の上場企業に温室効果ガス排出量の開示が求められたタイミングと重なり、同社の排出量算定サービスの採用が増えた。メガバンクや地銀と連携して中小企業にも提案しているほか、海外進出も果たした。企業が脱炭素に取り組むには現時点の排出量を把握する必要があり、算定サービスの市場が広がりそうだ。

政府も気候テックを支援する。経済産業省は24年度のグリーン・トランスフォーメーション(GX)関連の概算要求で、スタートアップ育成に5年間で2034億円を計上した。環境省も「環境スタートアップ大賞」を開始しており、12月22日まで募集している。受賞企業には資金調達を募るピッチコンテストの場を設け、成長を後押しする。次々と気候テックが誕生することで、産業の新陳代謝も促される。